PreCure §6 使わされし者 〜副将キリヤの登場〜
前期第26話までの悪役はジャアクキング及びその下僕5人であります。 先鋒を努めたピーサードはザケンナー使いを紹介するだけの役目のようで、せいぜいイケメン実習生に化けてよし美先生をたぶらかす程度の働きです。
次鋒のゲキドラーゴはオツムの弱い怪力で、第9話ではせっかくのチャンスもなぎさの涙の訴えにメップルを返してしまいます。
ここまでは武道の団体戦よろしく順に出て来ては負けて散るのですが、次の中堅ポイズニーからは同時に4番手のキリヤが絡み、更には最も強いイルクーボまで現れます。
旅する怪しい修行僧にも見えるイルクーボは5人組リーダーの如く描かれはするものの、実際この5人に統制というものはありません。 イルクーボの指導によって行動する或いは作戦変更を加える事は全く見られず、個性的な連中の寄せ集めに過ぎません。
イルクーボはその中で別物のように際立って強く、他の4人よりジャアクキングに近い存在であるだけのことです。
周囲のものや対戦相手からエナジーを奪ってしまう能力を持ち、大変危険な闇戦士で、登場するなり格の違いを見せ付けます。 虹の園や光の園にも詳しいようで、石の番人ウィズダムについてもかねてよりその存在、何処にいるのかを知っています。
プリキュアマーブルスクリューが放たれるその瞬間を利用してウィズダムを引っ張り出してしまうという芸当までやってのけ、最後にはプチ・ジャアクキングのようにその姿を変えるとんでもない強敵です。
中堅をポイズニーとするかキリヤなのかはどちらでも差し支えありませんが、ポイズニーが先に消えた事から、副将にキリヤ、大将がイルクーボとしておきましょう。
この中堅と副将は姉弟であるとされています。 闇の世界にそのようなものがあるや否やの詮索はさておき、似たような姉弟でないことは確かです。
姉は調査データを活用し、多彩な攻め方を見せます。 チョコでなぎさを釣り、ほのかには婆さんに化けて迫ります。 旅館の仲居さん、渡しの船頭さんにも化け、ニセプリキュアや学園マドンナもこれは使えると見逃さず利用します。
異次元空間に誘い込んでは鏡の間で我らが白黒を翻弄し、最後にはほのか当人に化けてなぎさを狙うのです。
彼女は本来騙くらかして接近しては名前通りの毒気をもって仕留めるのが得意なようです。 しかし最終戦で激昂して叫ぶ姿には 「なぜこのような小娘共に!」
という苛立ちは隠せず、戦闘経験では絶対勝るという自負も想定外の反撃に敗れ去ります。 反面、幾度かキリヤの秘かな助けによってプリキュアが勝ち得ているのも否定出来ぬ事実で、この毒姐御はさすがに中堅、実に手強い敵であると云えます。
弱いけれどもちょいと恰好つけた小粋なお兄さんに、脳味噌不足を筋肉でカバーするかのような北欧風怪力男。 どこでも化けますと化粧用具をしこたま持っていそうなお姐さんと続き、そして地味なハーフパンツ姿の男の子が最前線に登場します。
ジャアクキング配下5人組でキリヤだけが子供です。 ドクツゾーン戦士に性別や年齢は必要ないかもしれませんが、工場生産のロボット集団ではあるまいし、ジャアクキング自身もそれでは面白くない筈です。
一様な兵力は脆いもので、配下の手駒は多彩でなければいけません。 闇に棲む者達も人間同様男女の性があり、個性をもって幼児から次第に老いさらばえては消えゆくものと想像することに致しましょう。
さすればポイズニー姉さんと弟キリヤについても、ああ姉弟なのかと受け入れること容易であります。
副将・弟キリヤは姉とは異なり、なぎさやほのかの先取りデータをさほど大事とせず、懐深くに入り込んでしまえば生き肝を握ったも同然だと考えます。
1学年の転入生としてベローネ学院に在籍し、間近で悉な観察、プリキュアの日常をその眼で捉えようとします。 姉がその場その場で化けては変わったのに対し、弟は秘密工作員の如く最初から
『ベローネ1学年・入澤キリヤ』 として違和感無い存在を人間共に植え付けて潜入します。
化け込むに必要な最低限の文化、流行などはさすがに心得ていたと見え、第13話で道場破りの如くサッカー部に現れる場面ではリアルな動画が用いられており、いきなりディフェンスを突破してワンゴールを決める動きには演出の小村敏明もこのパフォーマンスを重要視しているかのようです。
彼氏にするなら将来性ある年下がベストとするベローネ女生徒達の趣向がまんざら冗談にも聞こえず、なぎさに難無く近付いては 「けっこういい子ではないか」
という評価まで得ます。 彼女の恋心まで調査済みなのか、科学研究発表会場で藤Pとなぎさを残して立ち去る辺り、なぎさの反応を窺ってみる余裕かと思えます。
可愛い年下のサッカー部ニューフェイスというアイドル脚光を引っ提げてキリヤはなぎさ同様ほのかにも近付きます。 しかし彼はここで未経験の壁に跳ね返され愕然とするのであります。
駅のホームに於ける最初の仕掛け、会話は既にギャグです。 これだけ騒がれている学園のアイドルをなぜ知らない? 噂の美少年・入澤キリヤがこうして話し掛けているのだぞ・・・。
信じられない当惑の中、自然体ほのかの反応はまるで取り付く島無く、自信に満ちた驕れるキリヤの初敗北、完敗であります。
雪城ほのか相手に噂のアイドルで目を惹こうと画策するなどは全くの無駄骨で、他の女生徒達がいかに騒ごうとも某芸能プロ系の如き軽薄丸出し少年に彼女が興味など持つ筈がありません。
その点ポイズニー姉さんは的を射ており、物理学者プレキストン博士を幻術で見せてはコミューンを渡せと迫ります。 ここでは詳細データに基づいた姉の方に軍配が上がり、一日の長を感じさせます。 目の玉ひん剥いてプリキュアに襲い掛かるラストバトルで彼女が叫ぶように、修羅場を践んできた経験の蓄積なのであります。
虹の園と称されるこの人間共の世界はどこも一様に見え、靡き易く誘導も容易な単純生物の世界である筈でした。 最初の敗北、しかも取り入る糸口すら掴めぬ完敗を喫した現実は、既知の資料から虹の園について少し書き換える必要があります。
脚光浴びるアイドルの取り入り仕掛けさえ蚊が留まったかにも感じていない自然体ほのかにキリヤは少々の戸惑いを見せ、その後あくまで自然に振る舞う彼女に影響されては揺らされ続けることになります。
ドツクゾーン戦士にとっては策を仕掛ける前に禁断の果実を喰わされたも同然で、相手が雪城ほのかでさえなかったらとその運命を呪い、如何ともし難い深みに彼は苦悩というものを知る事になるのであります。
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