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朝日放送 PreCure



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講談社 デジなか


   PreCure §2  その家庭ありて



 美墨家は某○イオンズのようなSRCモダン分譲マンションにあり、企業勤務でたぶん家のローンは背負っているであろう父親と、専業主婦の母親、それにやんちゃ盛りながらも可愛い弟との4人家族です。 本作品はこの家の長女・美墨なぎさを中心に進められます。
 なぎさとほのかという二人が主人公ではありますが、回想ナレーションを含め、なぎさからの視点で主たるエピソードは書かれてゆきます。

 美墨家に祖父や祖母がいないのは父が次男坊或いは三男坊であるのか、祖父や祖母は既に他界してしまっているのか、その辺りは定かでありません。 多くの視聴者少女達には身の周りがそうである故に、核家族の我家が投影されたようなこの美墨家には馴染み易いでしょう。

 4人で囲む食卓風景。 オヤジギャグが一家の灯火であるかの如くそれを披露しては満足げな父と、その寒いギャグに屈託無く同調して華やかに笑う母からは、自分達・美墨一家に対するこの両親の姿勢が窺えも致しましょう。 のびのび育まれているようななぎさや弟はこの両親在りてこそなのだろうという印象を与えます。

 この父親ならばまず仕事を家庭に持ち込みはしまいと思え、時にベタつきそうな母親と団欒を構築する中から発せられるほのぼのとしたオーラは、子供達の発育に欠かせぬ大切な有機肥料でもありそうです。 おそらく食卓は毎夜賑やかで楽しいものと想像出来、父親を筆頭にして我々は家族なのだという 『この家庭の意志』 とでも申すべき雰囲気を漂わせています。 このような御家庭の空気は実に快いもので、美墨家への訪問客は親戚知人を問わず楽しいひとときを共有出来るでしょう。

 子供達が一大事となればなりふり構わず行動する父はさすがに大黒柱のお父さんです。 子供達を見ていないようできちんと見ています。 弟のお使いエピソードでは、姉のバックアップを父はちゃんと知っています。 それは我が子を信頼しているのでもあり、弟が成し得た結果の向こうに姉の隠れたフォローがあることをとうに見抜いているのです。 この父は職場に於いてもなかなか魅力的な中間管理職であるかもしれません。




 対して、相方の雪城ほのかは和風平屋の大邸宅にて事実上祖母と二人暮らしをしています。 宝石、美術品の売買を商いとする父と母は揃って世界を飛び回り、海外生活を送っているため滅多に雪城家には帰りません。
 ほのかの幼い頃はお手伝いさんも雇っていたらしいのですが、彼女が中学にも上がって家事手伝いなど出来るようになり、今では 「お婆ちゃま」 と二人だけの生活です。

 広大な敷地を取り囲む外塀、京都の高級料亭とも見紛う庭を持ち、日々の掃除すら大変であろうと思わせる住居と蔵があります。 その構え、造りからは名門武家屋敷を連想させ、雪城家は代々続く由緒正しき旧家のようにも見えます。 両親が商人ならば両替商か回船問屋の血筋ではないかとよけいな妄想も懐きますが、さなえお婆ちゃまの品格、ほのかの気性などを考察すればやはり武家の筋ではないかと私には思えます。
 それともスタッフが設定した隠れ根本には 「お婆ちゃまが戦後一代で築き上げた雪城家」 とでもあるのでしょうか?  彼女の気品やそのオーラからは、当家の先祖と旦那様を陰からしっかりと支えてきた雪城家に相応しい嫁であったように思えてなりません。
 いかに大金持ちであろうとも両親不在の年月で幼い女児をここまで育てるのは相当の御苦労が伴ったことでしょう。 全てはこの雪城家第○○代実質の当主である雪城さなえさんのお力かと存じます。

 劇中、幼い少女時代のさなえお婆ちゃまに纏わるエピソードも紹介されます。 戦火により焼土と化した街でモンペ姿の彼女はミップルのコミューンと出会い、悲しみの中から明日への希望を見据えます。 先代から財の譲渡があったや否やに関わらず、雪城家を任される立場となってからは魑魅魍魎の如き輩と相対し、時に厳格、時に慈悲深く、 “お家” を守り抜いてきたものと想像に難くありません。

 第12話を見る限りさなえさんはミップルコミューンと出会って以降、度重なる危機にもそれを御守りのように懐いては発せられる暖かな命のパワーに助けられてきたようです。 第12話では彼女の手の温もりをミップルが 「懐かしい・・・」 と感じていますし、「この子が助けてくれた」 という彼女のセリフは意味深く、尾を引くものです。

 更に踏み出してかなりな冒険に想いを寄せるならば、戦後の混乱期にさなえさんはミップルと共に 『昭和のプリキュア』 として御活躍されたのでありましょうか? 当時の暴力団や進駐軍相手に正義のさなえキュアが白モンペ姿で宙を舞うなどというあられもない夢想はどうにも顰蹙を買いそうであります。
 そもそもメップルが未だこの虹世界に来ていない当時、おそらく彼女はコミューンの蓋を開く事も出来なかったでしょう。 ただ、これは温かな生き物である、自分の命の糧であると自身に言い聞かせては、神から 「それと共に生きよ」 と神託を授かったが如くに愛情込めて携えてこられた結果、折に触れミップルのパワーを戴いてきたのではないでしょうか。

 話が逸れてしまいました。 さて、例えほのかの両親が海外生活を余儀なくされようとも、さなえお婆ちゃまには実質当主としての責務があります。 即ち、孫に対する “雪城家の娘” としての教育であります。 それは将来自分の跡を継いで貰わねばならぬ当家の娘に備わるべき教養、品格の付与に他なりません。

 滅多に帰れぬ両親はともすれば猫可愛がりになるでしょう。 現に第10話では両親にその傾向が見受けられます。 しかし、娘である当人はそれを適度にあしらっているようでもあり、表面上むしろ両親に 「しっかりせよ」 と云わぬばかりに見えるのは、これぞさなえお婆ちゃまに将来当主として育まれた、今在る 『雪城ほのか』 なのだと申せましょう。

 難題に面し、なぎさは父や母に打ち明けることも可能ならば相談も出来ますが、ほのかは祖母に請う以外ありません。 その様な日々の中、なぎさは家族の大切さや有り難さを知り、弟を守らねばならぬという自覚を身に付けます。 一方、ほのかは両親不在である分、自ら多くのことを学ぼうと努め、祖母からは気品と帝王学にも類似する躾を施されてきたものと思えます。




 どちらかといえば平均的な子に近いなぎさに対し、ほのかは他人に頼ろうとする前にまずやってみる能動習慣が身に付いており、結果として我が道を行く求道者的側面が醸し出す 「平均的な集団に属さない子」、 「変わった子」 であるという客観的印象は否めないところであります。





 凡庸で賑やかながらも暖かい美墨家、特異ではあるが品格と尊厳を漂わせる雪城家。 なぎさとほのかそれぞれ人格の興味深い相異はこれら家庭環境によると申し上げて間違いはないでしょう。 雪城ほのかが縁側でぽつねんと夜空を見上げている同時刻、美墨なぎさは弟にコブラツイストをかけているのであろうと思わせる環境設定は、今まさに合わせられんと並べられた昆布と鰹節にも似て、それだけで味わいが想像出来ようというものです。













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