「おひかぁ、こう閑古鳥じゃしょうがないよォ。
炭が勿体無いから今日はもう終っちゃおうかぁ?」

「ええ・・・でも、もうちょっと開けていませんか。
いつも夕方寄ってくれる人達、来るかも・・・・」

「あんたがそう言うならいいけどさぁ、
まぁこんなモンかもしンないとは思ったけどね、今日は」

( そうだったんだ・・・・今日は喧嘩の日なんだ・・・・
 みんな見に行ってるんだよね、きっと・・・・ )








( おほのさんにいっぱいお話して貰ったけど・・・
 それでも、斬り合いするなんて・・・嫌だな・・・ )

( 大丈夫かな・・・・勝蔵親分、なぎ次郎親分・・・・ )

( 莉奈吉さんも志穂松さんも・・・
 みんなケガしないで帰ってきてくれるかな・・・ )

( やい、おひか!って・・・・・・おめぇよぉ!って・・・・・)

( 人斬り包丁なんて・・・・・なければいいのに・・・ )




























「こンの野郎ォー!」  キィーン! チンッ! ガスッ!

 「うおっ! てめぇこのっ!」

「回れぇ! そっちから行けぇ!」

 「野郎ォ! 喰らえっ!」 

「しぶてぇ野郎だ!」

 「てめぇの・・・! こったぃ!」  
ガシッ! チィーン!
























「どぉりゃあああーー!」  バシュッ! ザスッ!

 「ぐわぁっ!」
 「げふっ!」

 「野郎! 強え・・・!」

 「そいつぁ親分の言ってた莉奈吉だ!
  一人で向かうな! 三人掛かりでやっちめぇ!」

「まとめてきぁがれぃ! 掃除してやらぁ!」
  
カィーン! キンッ! ドバシュッ!

 「げぇぇっ!」 
                








「クッ・・・! 押されちまいそうでぇ!
分かっちゃいたが・・・・
両袖の二人ァあれほどの手練れたぁ・・・!」

 「喰らえ! 勝蔵ォ!」
「ええぃ! チクショー! このォ!」  

         キィーン! キンッ! キンッ!



「はぁ、はぁ・・・こっちの足を活かす暇がねぇ!
奴等め、無鉄砲に暴れてやがるだけなのによ・・・
激しすぎて付け入る隙が見えねぇ。 はぁ、はぁ・・・!

と、とんでもねぇ奴等だ・・・・! 無茶苦茶でぃ!」 
















「おまいさん! なにやってるんだい!
  それじゃ若いモンがへばっちまうじゃないか!
      ウチの子らを殺すつもりかいっ!」


がやがや・・・ザワザワ・・・・
「なんでぃ? あの威勢いい女ぁよ・・・?」
「おい、あれぁなぎ次郎のカミさんじゃねぇかぁ?」
「ほぉ、あれが雪城屋の講釈おほのさんかい、初めて
見たなぁ。大層な別嬪じゃねぇか」
「なんで女房が喧嘩場へ来てンだよ?」
「知らねぇよ! えれぇ熱くなってンけどなぁ」


「おまいさん! 聞いてんのかい!
           ちょっとこっちおいでなっ!」








「うひゃ! おほの!・・・・なんでおめぇが!?」

「おまいさんの終い喧嘩を見に来たんじゃないか!
  そしたらなんてざまなのさ! こっちおいで!」

「お、おめぇ、えれぇ熱くなってんじゃねぇかよ!」

「あたりまえですよ!
  いいから、ちょっとこっちおいでなっ!」


がやがや・・・・ザワザワ・・・・
「なんでぃなんでぃ? 喧嘩最中に親分のなぎ次郎が
女房に叱られてやんのかぁ?」
「わっはははぁー! こいつぁ傑作だぜぇ、おい!」

「おぅおぅ、そっちの方が面白ぇや! やい、前のヤツ
もっとしゃがめぃ! 見えねぇじゃねぇか!」








「おめぇ馬鹿野郎! 女の口出しするこっちゃねぇだろ!」

「なに言ってんですか! おまいさんの子分かもしれませんけどね、あの子らはあたしの子でもあるんですよ! 
このまんまじゃおまいさんに殺されてしまいますよ!」

「な、な! おめぇ、なんてひでぇ事言いやがンでぃ!」

「見てご覧なさいな! 志穂松も莉奈吉も、メグ蔵もマキ五郎も、みんなあの子ら一人一人の喧嘩だけで持ち堪えてるんじゃありませんか! もうヘトヘトですよ! ひびの入った川堤ですよ! 少しでも向こうの水が出始めたらいっぺんに全滅ですよ! 可愛いあの子らをそんな・・・・! 
そんな・・・! うううっ・・・!」

「お、おい・・・! こんなトコで泣くな! 馬鹿野郎!」








「なんでぃ? 奴等退いたぞ・・・・」

「こいつぁ幸いだ! 野郎共ォ! こっちも一旦退けぇー!
今のうちに水を取れ! 道具を取り替えろォ!」



「しかし・・・なぜだぁ・・・・?」

「ん・・・? ありゃあなぎ次郎のカミさんじゃねぇか!?
喧嘩場へしゃしゃり出て来て何やってンでぃ?」








「少しはあの子達にひと息付けるようにしてあげて下さい
ましな! このまんまじゃ莉奈吉なんて振り上げることも
出来無くなっちゃいますよ! 
あんないい子達・・・・可哀想で・・・! うっ・・・うっ・・・!」

「ま、待てよ・・・と、とにかく話ぃ聞いてやるから、泣くなよ。
周りぁ見てんじゃねぇかよ・・・」

「無闇やたら全部で押すからみんな大変なんですよ。
所々にわざと穴を作って誘い込むんですよ。そこを
包み込んで叩いていくんです・・・・ぼそぼそぼそ・・・」

「ホゥホゥ・・・おぅおぅ・・・・・」








「なんでぇ・・・・ありゃあ?
女房が策を授けちゃいるのけぇ? 
喧嘩の最中によ?
おいおい・・・ホントけぇ?」








「くはっ! めぇっちまうなぁ・・・・! ふはは・・・・
ふははははは・・・・・! こりゃあめぇったな! 
まったくよぉ・・・・ なぎ次郎! 
オレぁとことんめぇったよ、おめぇさん達にゃよォ!
わぁはははははぁー!」








「お、親分! でぇ丈夫でやすかぃ? 
どうかしなすったんで?」

「おい、てめぇら、みんなこっちへ集まれぃ! 
面白ぇ話を聞かせてやる」

「へぇ・・・?」

「実ァな、オレぁフンドシぁ締めちゃあいねぇんでぃ!」

「はぁ?」

「てめぇらもそうだろう? オレの言うこと聞いて素直に
フンドシ締めてきたヤツぁいるかぁ? 
怒りゃしねぇから正直に言ってみろぃ」








「へ・・・ヘェ・・・・実ァあっしら・・・その・・・
その通りでやす・・・・申し訳ありやせん、親分」

「なに、謝るこたぁねぇ。おおかたそんなトコだろうと
オレも思っちゃいたしな」

「へ・・・へェ・・・じゃあ親分は・・・」

「聞いて驚くンじゃねぇぞ、オレのへぇてんなぁな、磐梯屋に
特別に染めさせたぷりくわぱんつの特級品でぃ!」

「ええっ!」

「驚くなぁまだ早ぇぞ。
そんじょそこらのまげぇモンたぁ訳が違わぁ。
今じゃ語り草となったホンマモンの白黒ぷりくわだぜぇ!」








「ひえぇぇー! そ、そんなええ品を・・・!」

「あたりめぇじゃねぇか、オレを誰だと思ってやんでぃ!」

「さ、さすがでやす! 親分! さすが親分でやす!」

「あ、あっしぁ、さいにるみなすのをへぇてんでやす!」

「おぅ、そうけぇ。やるじゃねぇかぃ。高かったろう」

「あっしらぁ、花鳥風月のぷりくわでやす!」

「おぅおぅ、てめぇらまずまずええトコ狙ってらぁな」








「へへ・・・・どいつもこいつもいい顔してやんなぁ」

「ヘェ?」

「おめぇ達のよ、そんなツラぁ久しぶりに見た気がするぜ」

「はぁ・・・・」

「どうでぇ、代々受け継いで来た御高倶山の親分も
木の股から生まれたんじゃねぇ、人様の子だってぇのが
分かったろう?」

「そ、そりゃ親分は人でやす、えれぇお人でやす!」








「そうじゃねぇ。オレもおめぇ達もおんなじだと言ってんだ。
ウチの一家ぁ代々躾ぁ厳しいんでな、オレもそのようにして
きたがよ、どうやらおめぇ達のためにゃあんまり良かねぇ
遣り方だったようだ。
てめぇらがこのオレにブツクサ文句言ったことがあるけぇ?
オレに食って掛かった事なんざねぇだろう?」

「親分、そりゃ違ぇやす。親分のなさるこたぁ間違ぇ無ぇんで
あっしらぁ付いてくんでやす」

「ありがてぇぜ。そんなおめぇ達にゃ感謝してるさ。だがよ、
そればっかしじゃ、こいからのおめぇ達ぁいけねンでぃ」

「へぇ・・・・」








「おめぇ達がフンドシよりぱんつへぇてんなぁ、その方が
ぐえぇがええからだろう? そいつぁてめぇで考ぇた事
なんでぃ。オレに何と言われようが、喧嘩にゃぱんつだ
と決めたンでぃ。それがでぇじさ。
オレもおめぇ達にゃ隠して悪かったな。まぁ勘弁して
くんな」

「いえ・・・そんな・・・」

「その心意気でな、さしあたりオレの後釜をおめぇ達の
考ぇで決めてくんな」

「えっ! そ、そりゃ親分・・・・?」

「おぉともよ! オレァこの喧嘩済んだら身を退くぜ」

「えええっ!?」








「いい潮時でぃ。オレぁなぎ次郎倒すことだけに身体ぁ
張ってきた。こうして今、ぷりくわぱんつへぇたおめぇ達
と一緒にヤツを相手にしてるんだ、最高の気分だぜ」

「お、親分! そんな・・・!」

「誰が相応しいか、
おめぇ達の心意気をよ、ひとつに出来るなぁ誰なのか、
それをてめぇらで考ぇるんでぃ。
こいつぁ世間が驚きやがるぜぇ。
そんな跡目相続なんてなぁどこにもねぇからな」

「そんなこと、言わねぇでくだせぇ!」








「今日の初っぱなの攻めな、オレの指図からちょいと
ズレたなぁ、ありゃあ奴等の囲みからてめぇでわざと
ズラしたんだろう? 見事だったぜぇ。あんな芸当
出来ンなぁ御高倶山のてめぇらだけだ。どこにも
負けやしねぇ。胸張って自慢してやれぃ!」

「へ・・・へぃ!」

「この喧嘩・・・
この先ぁオレの細けぇ指図はいっせぇ無しだ!」








「えっ! そ、そんな、親分、それじゃ・・・!
今迄ずっと一所懸命稽古してきやしたんですぜ?」

「しんぺぇすんねぃ。おめぇ達ぁてめぇで思っちゃいる
よりぁよっぽど賢くて強ぇ。お互ぇ何しようとしてんのか
何を待っちゃあいるのか、手に取るように判るだろ?」

「へぇ・・・そう言われりゃ、まぁ・・・」

「野郎共! てめぇに自信持ちやがれ! 
身体ぁ勝手に動く筈よ、オレ達ァ強ぇんだ!
オレ達ァ御高倶山のぷりくわぱんつ党じゃねぇか!
暴れて見せろ! 思うまんま引っ掻き回して
ヤツらに火薬玉ぶち込んじめぇ!








「もいちど言うがよ、おめぇ達はどこにも負けやしねぇ。
オレに付いてきてくれたてめぇらに礼を言うぜ。
てめぇらぁオレの誇りだぁな。
死ぬんまで忘れるこたぁねぇ。長ぇ間ありがとよ」

「親分・・・・!」

「一人で勝負するよな無茶ぁいけねぇが、辺路寝の三羽烏、
莉奈吉、志穂松、メグ蔵のどいつでもいい、
倒したヤツらにゃこのオレがぷりくわぱんつ買ってやるぜ!
早ぇモン勝ちでぇ! 」

「おおっ!」








「火薬玉の放り渡しぁ俺達にしか出来ねぇ。
そいつを活かせ!」

「へぃっ!」 

「いいか、奴等も相当へばってやがる筈だがな、
なぎ次郎と三羽烏にゃぜってぇ一人で向かうな!
てめぇらにくたばられたんじゃ、
オレぁ死んでも死にきれねぇ!」

「親分・・・!」


「よっしぁ!行くぜ! 野郎共ォ! 」

「オオオーーッ!!」








( フ・・・・・・辺路寝湊の美墨一家か・・・・
 あのカミさん、なぎ次郎にどんな策を授けたのやら・・・・
 笑っちまうなぁ、まったく・・・・前代未聞だぜぇ。
 おめぇさんらァ何から何まで型にはまっちゃいねぇやぃ )

( おかげでこっちの頭ァぐちゃぐちゃだぁな。
 見ろぃ、あのコの顔まで浮かんできぁがる・・・
 ククク・・・ めえった、めえった。
 なぎ次郎、おめぇさんはやっぱり倒し甲斐があらぁ、
 しょうげぇ最高の相手だぜ )






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第十三幕  ぷりくわぱんつ



      
      恨み辛みぁ御座いやせんが 避けちゃ通れぬ勝負の掟  道具のダンビラぁ振り回し ケリをつけるが男の意気地