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そして、数日が経っていた・・・・・ |
「美味しかったねー」 「喰うもなぁ喰ったし、ちょいとブラつきに行くかぁ?」 「えー? いつものトコ連れてってよ」 「もうかよぉ。おめぇ暗くなンまで辛抱出来ねぇのかよ」 「いいじゃないさぁ」 「しょうがねぇなぁ。・・・ねーちゃん、お代ここ置くぜ!」 「はい! 毎度ありがとう御座いまーす!」 |
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( あの人達、これからどこ行くのかな・・・?) ( お店ひやかしたりお池の周り歩いたりするのかな・・・・ ) ( 好きな人と楽しいお喋りするんだよね・・・ ) ( いいなぁ・・・ ) |
( えれぇ娘だ・・・立派な商売ぇに身を置きなすってる ) ( ありがてぇと思う心・・・ それが人の道ってぇモンで御座いやすよ ) ( おめぇさんは野辺の花だ・・・・ ) 「勝蔵親分さん・・・」 |
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( 親分さんなら・・・ ) ( どんなのかな・・・? ) ( どんなお喋りしてくれるかな・・・? ) ( あんなこと・・・・・・言って貰ったの初めてだ・・・ ) |
「ねぇねぇ、おひかちゃん! 聞いたぁ? 聞いたぁ?」 「なに・・・・?」 「決まったらしいよ!」 「なにが・・・?」 |
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「喧嘩よ喧嘩っ! 美墨一家よ!」 「えっ・・・? それって・・・この前斬り合いしたみたいな・・・」 「そうそう! 今年ン入って二回ほどあったかな?」 「また喧嘩しなきゃなんないの?」 「今度は手強いよぉ。一家の前通ってきたらさ、 メグ蔵さんもマキ五郎さんもピリピリしてたもん。 なんせあの御高倶山なんだからさぁ!」 |
「えっ・・・・!?」 | ![]() |
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( そんな・・・・・ どうして・・・・? ) |
「女将さん・・・・」 「ああ、おひか。片付いたんだろ? ちょっと休みなよ」 「女将さん・・・なぎ次郎親分、喧嘩するんですか・・・?」 「え? ・・・・ああ、今度の喧嘩かい?」 「・・・御高倶山としなきゃなんないんですか・・・?」 「決闘の日、決めたみたいだね。 ん? どした?」 「どうして・・・なんですか?」 |
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「もう喧嘩なんて・・・しなくていいんじゃないですか?」 「そりゃ仕方ないさぁ、そンために一家張ってるような もんじゃないか。この前だって格闘一家とやってさ、 マキ五郎さん大手柄だったそうじゃないかぇ。 あの人羽振り良くなったよぉ」 「あたし・・・喧嘩なんて嫌いです!」 「おひか・・・あン人達にゃね、男の面子と意地ってモンが あるだろ?」 「そんなの・・・・・・あたしには分かりません。 じゃ、どうして御高倶山なんですか?」 「え・・・?」 |
( 親分さん・・・ ) ( あんな親切なこと言ってくれたのに・・・・ ) ( どうして喧嘩なんか・・・・ 親分さん・・・・ ) |
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( あのコ、もしかして・・・ ) 「ん? なんだいこりゃ・・・? あのコったら帳簿に落書き なんかしてぇ、もう・・・」 「 ・・・? なになに・・・『えがお・・・・・えがお・・・・・ のべのはな・・・ありがたいとおもうきもち・・・』 」 「あちゃー、まいったねぇ、こりゃあ・・・。 おほのさんの見立ては本物だったのかい」 ( それじゃあねぇ・・・なるほど・・・弱ったねぇ・・・ ) |
( 勝蔵親分は確かに惚れ惚れするようないい男だけど、 それだけじゃないかもしんないねぇ・・・ ) ( あのコはあン人にお父っつぁんや兄様みたいなトコも 見てるんじゃないかねぇ・・・ 一緒に暮らしててもあたし だけじゃ役不足だろうし・・・ ) ( うーん・・・こいつばかしゃあ馬鹿旦那手懐けるよな 訳にゃいかないねぇ・・・・どうしたモンかねぇ・・・ ) |
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「おう! おひかじゃねぇか。どしたぃ、集金のけぇりかぁ?」 「あの・・・親分・・・・」 「愚図るヤツでもいたのけぇ、誰でぇそいつぁ? 言ってみろぃ、オラァぶん殴ってやる!」 「・・・・・・お願いしたいことあるんです」 「あれまぁ、珍しいですね。何でもお言いよ、おひかちゃん。 ウチの人にはちっとも遠慮なんか要りませんよ」 |
「あの・・・あの・・・今度の喧嘩・・・やめてくれませんか・・・」 「あン・・・? 」 「親分達は喧嘩しなきゃなんないんだって・・・女将さんが 言ってました・・・・でも・・・」 「喧嘩ぁよしねぃってことけぇ?」 「刀振り回すんでしょ? いっぱいケガもして、死んじゃう こともあるんでしょ? そんなの・・・・嫌です!」 |
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「おめぇから見りゃそうかもしんねぇ・・・。けどよ、 そいつぁ呑めねぇ相談だな、おひか」 「喧嘩しないように・・・お話し合い出来ないんですか・・・」 「これぁおめぇ達堅気ン衆が口出しするこっちゃねぇ。 シマぁ張ってるオレっち食み出しモンの面子のもんでぇだ」 「そうなんですよ、おひかちゃん。案じてくれるのは 有り難いことだけど、避けちゃ通れないんですよ」 |
「あたし・・・難しいこと分かりません・・・でも・・・でも・・・ この前あんなに楽しくお茶飲んでお話してたじゃないですか」 「喧嘩しなきゃなんないなら、しても仕方ないです。でも・・・・」 「・・・・・・でもどうして、御高倶山なんですか!」 「どうして勝蔵親分なんですか!」 「どうしてあの人なんですか!」 |
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「おひか・・・おめぇ・・・」 |
「おひかちゃん・・・・」 | ![]() |
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「誰もケガして欲しくない・・・誰も死んで欲しくないです」 「あの人に・・・あの人に刀向ける親分なんて・・・」 「そんななぎ次郎親分なんて・・・・」 「あたし、嫌いです!」 |
「大っ嫌いです・・・・!」 | ![]() |