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それが答えだ!

 ホームドラマCh でフジの 「それが答えだ!」 が始まった。 97年に放映されたドラマで、当時は毎週楽しみにしていたものだ。 「科捜研の女」 とか 「相棒」 などでお馴染みの 戸田山雅司 の脚本による作品。
 三上博史や萩原聖人、藤原紀香らの面々はみなさすがに若い。 羽田美智子だけは今もあまり変わらない気がする。歳を召さない御尊顔かもしれないが、この女優の醸す色香は当時も今も変わらず若々しいということだろう。今やワイドショーの司会者という印象が強い麻木久仁子も羽田と同じ教師役で出ている。 ベビーフェイスの藤原竜也は男子生徒役。彼も現在とあまり変わらない。若く見える風貌が持ち味の俳優と言えようか。

ファイル 47-1.jpg 深田恭子がセーラー服の中学生少女を演っている。演じるのが初めてなのか、お世辞にも上手いとは言えず、棒読みに近いセリフでもある。ただ、洗われてもいない素人の深キョンという点ではマニアにとって貴重な出演作ではあるだろう。悩殺のフトモモを晒してくれたドロンジョ様と比べれば、失礼ながらそのおみ足も平均的な中学少女らしく象さんの足を思わせる。 ああ・・・年月というものは偉大である。

ファイル 47-2.jpg 先頃亡くなった谷啓が校長役で、これがいい。田舎の中学校らしく校舎裏手でヤギを飼っており、それに草を食べさせている場面などはいかにも長閑で、暇そうな田舎校長そのものである。こういう情景に惹かれる。
 田舎といえば、ロケ地が大変美しい。山梨だという話で、やさぐれのマエストロがボート浮かべて釣り糸垂れる寂静とした湖は富士八湖のひとつだと言われている。別荘も池田商店も喫茶店も中学校も、緑に囲まれたその雰囲気、満点である。中学生オーケストラなら村興しになるという発想も、ここなら生まれて不思議でないように思えてくる。因みにマエストロの別荘住所は 山梨県北巨摩郡八木山村大字中沢字上八木132 となっている。勿論、実在する住所ではない。

ファイル 47-3.jpg 言うまでもなく、村人はみな純朴で野心がない。この前から山の上の方にある怪しげな別荘によく分からん男が住み着いている。電話で注文があるから雑貨商の池田商店はせっせと食材や日用品を配達するが、ツケは溜まりっぱなしで一向に払ってくれる気配はない。それでも放蕩三昧な生活の様子に 「アンタ、缶詰ばっか喰ってちゃいかんよ」 と自家製ラッキョウ漬けをくれてやる。元より音楽界などにおよそ縁のない村人の生活である。その男がクラシック音楽界の世界的マエストロだと誰も思い付かないどころか、知りもしない。別荘に籠もりっきりの 「山の上の怪人」 と噂されるに充分な環境と要素である。

ファイル 47-4.jpg 若くして世界のマエストロに祭り上げられた男は世界の頂点に君臨するかの錯覚に陥れられ、我が儘で刺々しくプライドだけが異常に高い。思うようにならぬ苛立ちが別荘内の家具に当たり散らせもするが、池田商店差し入れのラッキョウ漬けだけは放り投げられない。ここに物語の本質が見える。
 異世界から貧乏村にやってきた世界的音楽家が村の子供達のオケを作り上げる話ではあるが、世界を股に掛ける一人の男と山村僻地に暮らす村人との世界観、人生観のぶつかり合いがこのドラマの神髄たるところだろう。

 当時の視聴率はどうだか知らない。自分が大層気に入っていたのでもう一度見たいと願っていた。ネット上を探せば端々が細切れに拾えもしよう。しかしDVDにするのでもなく、再放送もされなかった。
 生徒役の一人であった少年による校内傷害事件が障害となったらしい。出演当時ジャニーズJr だったそうなのだが、辞めた後よからぬ徒党を組んでいたらしく、女性教諭に暴行を働いて素行不良が明るみに出た。
 それ故の作品封印ならば迷惑千万である。作品に罪はない。のりぴー出演のドラマも再放送されるとかされたとか。一定期間封印することが作品権利を保有する側の禊ぎという訳か。 どうであれ、今回放送されるのはまことにありがたい。