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INDEX Ⅱ 第3話

 神裂という存在は一党を導く者、いわばカリスマ、数々の伝説を今に伝える天草四郎のようなものか。神々しいほどの美少年であったとか水の上を歩いたとか、イエスにまつわる伝説を複写したかのような言い伝えは信者達によって輪を掛け誇張され、摩訶不思議なる超能力者か宇宙人のようにまで話は及ぶ。実際にその乱で自害したのか殺されたのかも定かでないらしい。その場に居合わせた信者達が事の真相を伏せたのだとすれば大したもので、先見の妙がある。伝説の始まりに謎がなければ後世に影響は残せない。

 なるほど、表と裏を巧みに使い分けるローマ教会はまるでヴァチカン。ロシア正教や共産主義の侵攻を恐れるあまりナチスのホロコーストに目を瞑ったり、ナチス要人の逃亡を手助けしたり。また科学分野に至るまでその情報網は恐ろしいばかりだというではないか。表の顔である宗教というヤツはまことに厄介で、それを利用する組織の強さは世界中の人間が身に浸みて知っている。

 ローマ教会が洗練された軍事組織的行動を見せるのに対し、天草式一党は一見ただの愚連隊にも見えるという描き分けが面白い。もっとも、史実に於いても虐げられた信者達のムシロ旗だったのだろうから、天草の名を用いるからにはこのくらいで当然か。

 お前を助けに来てやったのではないかとオルソラに説明したところで、それはお世話様で御座いましたと片付けられたのでは拍子抜けもいいところ。お前本当にありがたいと思っているのかと疑いたくもなる。しかしお礼といってはなんだが、またまた汗を拭いて貰ったり、それをあなたの手で私の首にと悩ましき姿勢をとられたのでは、当麻君も不愉快であろう筈がない。
 抱いて下さりませといわぬばかりな暗がりの悩殺ポーズに、据え膳喰わぬは末代までの恥だろう。半開きのそそる唇からそれこそ甘い吐息のひとつも漏れたのならば、「理性よさようなら」 と決め込めたろうに、あれでは生殺しもいいところ。当麻君、君はやっぱり大したヤツだと肩を叩いてやりたいよりも、なにしとるんかい、イテまわんかい、と歯痒さの先立つ濡れ場もどきであった。ああ勿体無い。