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桜並木

 小雨に少し花片を散らし始めた満開サクラの並木道をクルマで通る。 最近のクルマは安物でも昔と違って静かに走る。 アス路面の状態がザラついていなければ、音も無く滑走しているかのような感覚である。
 数キロに亘るこのサクラ通りは一応国道だが、田舎故に交通量は極めて少ない。 サクラのシーズンには穴場だという人もいる。 道路管理者が多少なりとも樹木の世話をしているのだろう。 そうなのか、街の人々にはそう映るのかと思う。 なに、自分の地元なのだから、私には穴場でも何でもない、生活道路なのだ。

 所々に駐車スペースが設けられている。 桜並木展望のような場所もある。 なるほど、定年後の御夫妻に見えるカップルがクルマを停めて写真を撮っている。 残念ながらシート広げて花見宴会出来るような場所は殆ど無い。 だが、この季節にそこを通ると改めて花の恩恵を感じる。

 サクラがトンネル状になっている箇所は世界が淡い桜色に染まる。 アス舗装面でさえほのかなピンク。 幻想的でさえある。 日本にはサクラがやはりよく似合う。 道路上に停車する馬鹿がいないのは幸いだ。 好きなワルツを流しながら、静かに静かに通行する。 得も言われぬ陶酔感である。 あと数日後には舗装路面が花片絨毯になるのだろう。