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名作は用いられる

 先頃の「けいおん!!」で学園祭出し物として使われた「ロミオとジュリエット」。秋山澪のロミオも田井中律のジュリエットも、選ばれた以上はその役に案外ひたむきな姿勢が窺え、名演だった。学園祭でのそれは「ふたりはプリキュア」を思い出しもする。ジュナとレギーネに襲われながら、なぎさロミオもほのかジュリエットも最後は見せ場を作って教頭のブラボーまで引き出したのは記憶に残る。また「サクラ大戦」では確か「ジュリオとロミエット」という演目名になっていた。勿論、マリア・タチバナと神崎すみれによるものだ。多くのアニメを御覧になっている人であれば、あそこにも使われていた、あれも題材はロミジュリだった、などと更に次々出てきそうな気がする。

 この題名の劇場映画となれば昔から何本も作られているのだろう。自分の年代ではオリビア・ハッセーが浮かぶ。何よりニーノ・ロータによるテーマ曲が広く売れ、今でもラジオや茶店のBGMでよく耳にする。スクリーンミュージックのスタンダードと言ってよい。

 愛し合う二人がとどのつまり自ら命を絶つ最期が見せ場で、女が仮死状態とは知らず男は後追いで服毒し、目覚めた女がその後をまた追って自身に剣を刺すという、若い二人の後追い連鎖が悲劇。プロの舞台劇でも繰り返し上演される名作だ。
 学校の文化祭で取り上げられるのには壮絶なまでの愛の姿に憧れがあるのだろうし、悲劇に至る背景に両家の敵対があって若い二人は被害者であるというやるせなさが好まれるのではないだろうか。どうあれ美しくもはかない悲劇のヒロインはいつの世も変わらぬ人気を得る。

 一方、「ストライクウィッチーズ 2」では「ローマの休日」。高貴なる御令嬢が一市民と共にローマを巡るというアレである。オードリー・ヘプバーンを一躍有名にした名作映画もアニメの中で度々用いられる。セーラームーンでも「十番街の休日」というのがあった。かつて米国大統領のカーターが来日した際、一家お忍びで焼鳥屋に現れ、新聞を賑わせた。事の真相はどうであれ、ジミー・カーターという男もかの映画のファンだったのではないかと、あらぬ想像までしてしまう。

 なにせ痛快極まりなく、世間知らずな美しい姫君の奔放的振る舞いであるのがいい。ストライクウィッチーズではローマそのものを舞台にしており、グレゴリー・ペックによる「真実の口」に於けるからかいエピソードなどはそのままルッキーニに演じさせている。そういえば「ガンスリンガーガール」のヘンリエッタもスペイン広場に面して映画「ローマの休日」に憧れる様子がチラリと窺えた。かの大階段ではジェラートを食べるのが粋というものらしいのだ。
 だが、イタリア旅行経験ある知人によれば、「今時あんなもの食べながらウロウロさせてくれるわけないじゃない」と、まこと現実に引き戻される夢のない話ではあった。