記事一覧

ごっこ

ファイル 284-1.jpg なんだこれは? と訝しげに見ていながらも思わず吹き出して笑ってしまう魅力は何だろうかと考えるに、幼き自身に覚えのあるノスタルジックな “遊び” がそこに展開されるからだろう、という答えに至る。




 パンツァーは 「戦車道」 なるその道を究めるべき部門のひとつが看板になっている。 剣道が刀、弓道が弓であってそれらが紛れもない武器、武術の類であるのだからして、戦車も武器、兵器なれば、それを究めるのも武道とされてよいではないか。 最初の発想はおそらくその辺りにありそうだ。

 戦車そのものがSFデザインでない実戦史に基づくリアリズムで描かれているため、その鉄の塊にセーラー服の少女達が搭乗する絵はかなり奇抜で、それ故に面白さを持ち、それがクラブ活動だとされている馬鹿馬鹿しさがいい。




ファイル 284-2.jpg 戦車内部は少女の寝室の如く小物が備えられ、兵器ではあるがおよそ戦闘とは無縁の様相。 だがこれも、トラックやダンプの女性運転手なら運転席に少なからずこういった小物のひとつやふたつ持ち込んで仕事しているだろうし、頑張っているデコトラお姉さんから見れば、まだまだ可愛らしいとデコピンのひとつも喰わされそうだ。











ファイル 284-3.jpg パンツァーは戦争、中二病はアニメやゲームのアクションヒーロー。 この2作品に見る共通項な 「○○ごっこ」 は、同年代の寄り集まりで往々にして語られる 「あの頃は」 とか 「そういうのが好きだった」 のノスタルジーを含む。
 片やクラブ活動、片や未だ拭いきれぬ願望妄想の世界ではあるが、血生臭さを排除したこのような 「ごっこ」 を扱う作品は、ジャンルの一枝を予感させもする。 ごく平凡な日常でありながら突如仮想戦闘空間に早変わりし、再び舞い戻るというのは、バーチャルリアリティがますます生活に入り込んでくるだろう近未来を想像するに、こういった作品ジャンルも当然生まれてこようと妙な納得に至らされる。



 しかし、中二病の六花や凸守、パンツァーのみほ達を見ていると、ああ彼女等はなんと幸せなのだろうかと羨みが湧き上がる。 それだけ、いくつになっても楽しかった 「ごっこ」 は忘れられないものなのである。