火と火野レイ


炎     巫女レイ     闘いの戦士



 人類と火の関係は古い歴史の上にあります。太古から火は祭事や占いのために欠かせない 神聖なものでした。我国の多くの祭りでも他国の祭典でもそれは聖なるものとして取り扱われます。 オリンピックの聖火は太陽光線から生み出されるのですね。
 人類が火に対して最初に霊力を見出したのは自然現象だろうと云われています。つまり、火山 の噴火や落雷による火事、又は風によって樹が擦り合わされての出火などです。それは次々と 周囲のものを食べ尽くして(焼き尽くして)いきます。畏怖がそこに生まれます。太古の人々がそ れに神性を見出すのも無理からぬことでしょう。
 地水火風空を五大と云いますが、地水空風の中に火が加えられているのも、それは自然の産 物に他ならない証と云えます。そもそもビッグバン理論によれば世の始まりは灼熱の一点からと いうことになります。天体の恒星は常に地獄のように燃えています。我々の太陽の中心部では毎 秒6億トンもの水素がヘリウムに変わって想像を絶するエネルギーを放出しているのです。地水 空風よりも先に火ありき、とは云えないでしょうか。

 火は暖かく熱く、人類の生活にとって不可欠な道具です。人々は火を使って身体を暖め、火を 使って夜の照明を確保しました。人々は火によって食物を調理し、火によって動力を得てきまし た。太古の人類が火を知った時、彼等は火を太陽と同程度の神聖さで迎え入れたに違いありま せん。日本人は太陽と火を同じ発音の語によって表します。「ひ」ですね。この火も陽も、どちら にせよ人間の生存上欠かせぬ恩恵を受けるものです。このような生きてゆく上での必要不可欠 な自然に対して最初の神や精霊を感じていったことでしょう。

 火は太陽と同じで,それは神が与えたひとつの現れなのだとされてきたのではないでしょうか。 火を崇める行事は神を崇めるに相当します。世界中でのあらゆる儀礼に火は使われます。火野 レイについて重要なことは、彼女が火神の守護を受けているということです。彼女にとって火神と は何でしょうか? それは彼女が神社の巫女である以上「日本の火神」であり、Sailor Marsにと ってそれは「火星」でしょうね。彼女は火の前に座り、火のエネルギーと同調してあらゆる判断と 予測を行います。余談ながら、「ReiのFire Reading について知りたい」という熱心な米国のファン が数名おられまして、最初に「Fire Reading 」というのが直訳そのものでよいのかどうか解らず に「それはどういう意味ですか?」などと訊き返さねばなりませんでした。文字通り火を読む行為 なのだそうです。^^;

 火は人類にとって大切なものには違いありませんが、あまり激しい火は人類に喜びを与える どころか、むしろそれは人類にとって災厄でしかありません。火を武器として使い始めたことが 人類の悲劇の始まりでしょう。悲しいことではありますが、人類が火を道具のように扱い始めた 瞬間から武器としての火器が生まれたのです。今、世界中にその火器が多くありすぎます。
 人類は火に神性を感じましたが同時にそれを怖れました。ソドムとゴモラは天からの火によっ て焼き尽くされたとされます。火は恐ろしいものなのです。現に、日本の神話では伊邪那美(イ ザナミ)は我が子である火神の火之迦具土(ホノカグツチ)を出産した際、その我が子によって 大火傷を負い、それが元で死んでいます。世界中の神話の中には火神が多く登場し、怒ると 焼き尽くすという攻撃的な象徴でもあります。仏教では明王達でしょう。その図画を見る限り背 景に炎を背負った明王が多く、不動明王などインド神話の最高神シヴァの別名からきているも のがありますね。
 簡潔に表現するならば、菩薩は知恵や慈悲で如来を手伝ういわゆるブレーンな訳ですが、明 王はそれを遂行させ取り締まる公安や警察庁のようなものです。故に強大な力を携えているの ですね。セーラームーンで月野うさぎを大日如来に例えるならば、ブレーンの水野亜美は文殊 菩薩又は虚空蔵菩薩、木野まことは金剛夜叉明王、愛野美奈子は愛染明王、火野レイはやは り不動明王でしょう。^^;  従いまして、火野レイが火力をもって敵に敢然と立ち向かうのは当然 のことなのです。

 過激な火は我々を恐怖の地獄に突き落としますが、適度な炎は我々を興奮させるものです。 それは、フェスティバルで火が用いられる理由のひとつかもしれませんし、アクション映画ハイラ イトでは決まって硝煙、爆発が背景に使われます。江戸っ子は火事と喧嘩が大好きで・・・などと 云われてきたらしいですが、江戸っ子に限らず人間は皆火事場見物をしたがる傾向にあるよう です。闘争心を駆り立てる作用があるのでしょう。やはり闘いの戦士セーラーマーズの背景に炎 は欠かせませんね。

 「隠し砦の三悪人」という映画の中では火が効果的に用いられていると思います。この作品は 典型的な娯楽時代劇映画でして、あの主演の三船敏郎が何も知らない藤原釜足と千秋実を手 元にして御家の財宝とお姫様を逃がすという物語。ジョージ・ルーカスがスターウォーズの参考 にしたことでも有名です。なんでも、千秋ら二人が背を丸めて情け無くひょこたんひょこたん歩く のがとても良くて、それを参考にしてC−3POとR2−D2を生み出したのだそうですね。当話題 とは関係ありませんが、この映画のお姫様役である上原美佐がなかなかいいです。短パン姿で 股を開いて仁王立ちするのがとても恥ずかしかったそうですね。それにしましても、まあ、あの 吊り目のメイクが凄いこと・・・。^^;
 その映画の中に村人の火祭り場面があります。三船敏郎らが切羽詰まって財宝をその火の 中に投げ込んで隠すのですね。燃えさかる火の周りを村人が踊るのですが、その火祭り場面 は圧倒的迫力で我々に迫ります。米国映画のそれらの迫力は概ね大量の石油を爆発させる 手段に依存します。ですが、「隠し砦の三悪人」のその場面は、絶妙なカメラワークと構図によ って演出されています。モノクロですが素晴らしい。外国の人が日本の火祭りを少しでも理解 できるのではないかと思いますね。

 台風や雷が去った後、いつまでも停電が続いてやむなく蝋燭一本で家族が寄り添うことがあ るでしょう。水害や倒壊さえなければ考えようによっては偶にはいいものです。囲炉裏のある旧 家に憧れたりもします。人は夜になると火のある所に集まるのです。火を囲んで寄り添うのです ね。家族団欒で土鍋を突っつくのもその延長線上にあるのかもしれません。囲炉裏は明かりと 暖と調理を一度に可能にし、人々の対話と親睦を生み出しもします。火を囲んでの儀式やキャ ンプファイアなどでも、聖なる火を中央に置いて周囲に集うという観は代表的なものとして捉える ことが出来ます。六田登の「かぼちゃ白書」最終話では、対話も途切れていた一家の主が掛矢 一本でマイホームを粉々に取壊す事により、その夜我が家廃墟で焚火を囲んで初めて一家が 繋がりを得るのです。

 静寂な闇にささやかな明かりというものはまた異なる情景を醸します。キャンドルライトは殊 に神秘的ですね。夜空の星や月光を仰ぎては遠い神秘な畏敬の念を抱いていたのが最初かも しれません。百万ドルの夜景と呼ばれる街の灯を眺めて恋人達が寄り添うのは、原始の時代に 夜空の銀河を眺めた名残ではないのかとさえ思えます。
 不便ささえ考えなければ蝋燭や油による灯明時代はロマンチックであったかもしれませんね。 今の世は年々夜が浸食されて、深い山中にでも入らない限り自然な夜は得られません。これで はドラキュラもポーの一族も住み難いです。^^;
 この暗さ、静けさ、神秘さが幾多の儀礼に必要とされています。夜の炎は妖しく、なまめかしく、 また人の精神を洗浄するかのように清廉な姿に映りますね。悪魔の黒ミサから看護学校の戴 帽式まで、延々と用いられている所以でしょう。勿論、我等が火野レイの祈祷、呪術を忘れては なりません。

 火野レイが行う儀法では、炎のエネルギーは夜に増大するとされます。周囲が暗い環境にお ける視観的な考えもあるのでしょう。また、精神集中には夜の静けさが必要です。第99話を観て、 「レイちゃんはなにも徹夜で火の前に座らなくてもいいのに」などと云ってはいけません。夜でな ければ出来ないのです。
 彼女は火を前にして精神を集中させます。護摩木に念じながらそれを火に投入します。護摩 というのは願い事を念じながらお供え物を火中に入れる事で、サンスクリット語のホーマが音写 されたものです。燃やされている炎そのものが火神なのではなく、ここでの火の役目はあくまで も火神との媒体です。炎のエネルギーと彼女の精神が同調して初めて彼女は火神に祈願可能 となり、またそのお告げを聞くことが出来るのです。その一瞬の彼女はトランス状態に近いかも しれません。
 一般に巫女というと神が憑依する仲介者という概念が強いのですが、火野レイの場合は彼女 自身に憑依する訳ではありません。それは行う儀法が密教のものであることに起因しています。 元々護摩が「供物を火に焼べる」という意味からなるものであるならば、それはおそらく神や仏 の降臨を促す行為であり、立ち上る炎と煙の中にそれらが降りてくると解釈するのが妥当でし ょう。
 火野レイの儀法によって敵の幻影が炎中に浮かび上がりますが、あれは火野レイがそこに 呼び寄せているのではなく、彼女の願い儀法によって火神がそこに投影するのです。
 日常の彼女は火の前で世の平穏と災厄の払いを祈祷し、仲間や周囲の人々の無事を願い ます。彼女の霊感と火神のお告げにより邪なるものの存在或いは接近を悟った時、彼女はま ずそのものの正体把握を試みます。第六感で感じたそれが間違いなく邪悪なるものと確信し、 それがどのようなものであるのか判明したならば、彼女の呪術は攻撃に転じます。即ち、降伏 法・悪霊の退散です。






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