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「 いやぁーいい天気でよかったよぉー!」 「やっぱり桜はいいよねぇ・・・ お、ここなら広くていいね、井戸も遠かないし・・・ ここにしよっ!」 「 〜♪〜愛しぃ〜愛しとぉ〜言われてぇ〜みてもぉ、 あなたの見る目はぁ〜サクラじゃぁ〜ないかぁ〜♪〜 」 |
「 〜♪〜えぇ〜ぇえ、やっこさあぁん〜♪〜 .......っと。 あっ!」 「やぁ、いらっしゃいましぃー! 天気良くて 良かったねぇ! ちょっと待ってね、 今、飯台出すからねー!」 |
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「あれま、ちょっと、どうしたんだい、あんた! 泥だらけじゃないかぁ!」 「・・・・・・・・」 「一人かい? 団子食べに来たんだろ?」 「・・・・・・・・」 「え? どっかケガしてんじゃないだろね? ちょっと! こっちおいで!」 |
「まぁ、まぁ! どうしたんだい! そこの崖の先から落ちたんじゃないだろね?」 「・・・・・・・」 「どっから来たんだい? 連れはいないのかい?」 「・・・・・・・」 「なんてことだろうね、若い娘が・・・きれいな顔立ち してんのに、可哀想に、こんなンなって・・・・ お待ち、今、湯で拭いたげる!」 「・・・・お・・・・おなか・・・・」 「なんだって?」 「・・・・おなか・・・・すいて・・・・」 |
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「ちょいとぉ! あんた、 いいんだよ、そんなことしなくったって・・・!」 「いえ、ひと晩お世話になりましたから・・・・ あたし・・・・掃除くらいしか出来なくて・・・・ 」 「はぁ・・・律儀なコだねぇ。 そいじゃさぁ! そこ登ったついでにひさし送り出しとくれよ! そうそう、それそれ、そこ外してさ、その紐こっちへ!」 |
「なんでぇ、女将ィ? あのアマッ娘ぁよォ?」 「ああ、親分・・・いえね、ちょいと訳ありでしてね」 「可愛いコですねぇ。お弟子さん雇われたんですか?」 「そうじゃないんですけどね、ちょいとね・・・・」 「ほぉ・・・見てりゃけっこう使えそうじゃねぇかぃ」 「どこの娘さんなんですか? 見掛けないコですよね」 「ええ・・・はは・・・・どう言ったらいいのか・・・・」 |
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「あの・・・あの・・・おまちどおさまでした・・・・」 「お、おい、でぇ丈夫けぇ? 落とすなよぉ」 「ああ、あ、あ、も、持って、持って下さい!」 「ぅおっ! 危ねぇ! バカッ! あああっ・・・!」 |
「す、すみません! すみません・・・!」 「女将ぃ〜・・・出し方ぐれぇ教えとけよぉ〜っ!」 「おまいさん! おまいさんがドサクサに紛れて 手なんか握ろうとしたからじゃありませんか!」 「ば、馬鹿野郎ォ、そ、そんなことしねぇよ!」 「あたしの目は節穴じゃありませんよ!」 「あ、あの・・・すみません! すみません・・・!」 |
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「あんたさ・・・身寄りないのかい?」 「・・・・・・はい」 「どこ行くつもりだったんだい? あてはあるのかい?」 「・・・・・・・・・」 「そっかい・・・・・・・・そうだろね・・・・・ あんた、あたしンとこに居な。 ・・・嫌でなきゃあさ」 「え? 女将さんトコに?」 「なにね、この前、屋台をおっきくしたんだけどね、 正直立ち回りがけっこう大変でさ・・・・・・・・名前は?」 「ひか・・・・です」 |
そうかい・・・・いい名前じゃないかぁ! ![]() あの・・・ホントに、ホントにいいんですか・・・!? |
( あのおひかがねぇ・・・・ 勝蔵親分のお目に留まったのかい・・・ よかったねぇ・・・・ 生まれも育ちも知らないあんたが ようやっと幸せンなれそうだよ・・・・ ) ( 久しぶりに啖呵切っちゃったねぇ・・・ あの二人ぁ長い付き合いだけあって 痛いトコ突いてくれるよぉ・・・・まったく・・・ アカネ姐さんもあの二人にかかっちゃ 形無しだねぇ・・・・はは・・・ ) |
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( おっ母さんってこんなのかなって・・・ いつも思ってます ) ( だから・・・・あたし・・・一緒に居たいんです。 女将さんの傍に居たいんです ) ( そんなこと・・・・言うんじゃないよ、おひか ) ( 一緒に暮らしたかァない親なんているもんかね・・・ ゆ・・・緩んじまうじゃないかぁ・・・・肚がさ・・・ ) |
( で、あいつをどうすンでぇ? 木っ端役人ぐれぇ黙らしてやるぜぇ ) ( それにゃ及びませんよ、親分。 あのコはね、 養女にやったけど先方がみんなおっちんじまった んで連れ戻したってお届けしときましたよ ) ( そうけぇ、そんなんで誤魔化せたンならいいがよ。 無宿人囲い込みぁ一応御法度だかンな ) ( そちらの手立ては親分達ゃ手慣れたモンでしょう からねぇ・・・あっはっはっ! ) |
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( お客さん多くなりましたね、女将さん ) ( えへへ、そうでしょう。おひかのおかげですよ ) ( あいつぁ若ぇに、てきぱき仕事しぁがるなぁ ) ( そうなんですよ。覚えのいいコでしてねぇ ) ( か、可愛いしよォ・・・・・・・・・・い、痛ぇ! バカッ、なにしぁがんでぇ! 変な意味じゃねぇよ!) ( おまいさん、あたしの目ェ見て、も一度言えますか? ) |
( こういう時ゃ・・・・ けっこう辛いモンだったんだねぇ。 親一人子一人ってのはさ・・・・・ ) ( ちぃと気ィ抜きゃ倒れちまいそうだよ。 天下のアカネ姐さんなのにさ・・・・ ) ( おひか・・・・・ ) |
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「女将さんはいないのかぇ?」 「はい、今ちょっと切らしたもの仕入れに」 「そうかぇ、元気でいなさるかね?」 「はい。 あの・・・なにか御用でしょうか?」 「なに、元気でいなさるならええんじゃよ。 屋台も大きくしなさったんじゃのぉ。繁盛しとる ようじゃ。あんた、娘さんかえ?」 「え、ええ・・・はい!」 「ほぅほぅ、可愛い娘さんじゃ。ひとつ包んでおくれ」 |
「そうかぇ、こんなええ娘さんがおったんじゃのぉ」 「婆っちゃん、昔っからウチの団子を?」 「女将さんが屋台店を始めた頃によぉ来たんじゃ。 ほれ、川向こうからじゃでの、歳をとるとなかなか 思うよにいかんでの、ほっほっ」 「そうですかぁ、それはありがとうございます」 「わしの孫も生きとればのぉ、丁度あんたぐらい じゃ・・・あんたは顔色もええし、ほんにええコじゃ」 「お孫さんが・・・」 「女の子じゃった。流行り病での・・・」 |
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「ええ手じゃ・・・。張りのある若い娘の手じゃ。 わしのは、ほれ、こんな皺くちゃじゃ」 「婆っちゃん・・・」 「身体に気ィ付けての。あんたはこれからじゃ。 これから何でも出来るんじゃ。きれいな娘さんじゃで ええ人とも一緒になれるじゃろぉ」 「・・・・・はい」 「そうかぇ・・・女将さんはそりゃあ苦労しなさったが、 こんなええコを授かっとったんじゃのぉ・・・」 |
( か、川向こうのおよね婆さんじゃないか・・・・ 足が悪いのに訪ねてくれたのかぃ・・・ ) 「若い時分というモンは二度と戻って来やせん のじゃ。わしの孫の分まで達者でいてな、思う 通りに、後で悔いの無いように生きとくれな」 「婆っちゃん・・・・」 |
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「女手ひとつでのぅ・・・ 客商いしながらこんなええ娘さんを・・・えらいもんじゃ。 あんたに手伝わせとるンも、どこへ出しても恥ずかしゅうない コにしたいがためじゃ。甘やかされて火ィひとつ熾せんコが 多い世の中に、さすがは苦労人の女将さんじゃ」 「はい・・・」 「ほっほっ、仕事がそのまんま嫁入り修行じゃの。 ええおっ母さんじゃ・・・・ ほんにあんたのおっ母さんはええおっ母さんじゃ」 「はい!」 |
「どこへ嫁いでもの、 おっ母さんに習ぅたことは忘れンでな」 「はい」 「ええコじゃ、女将さんの自慢の娘さんじゃろう。 あんたもの、誰にでも自慢出来るおっ母さんで幸せじゃ。 どこへ行っても親孝行は出来るもんじゃよ。 達者でいる事じゃ。わしの孫は不憫じゃったがのぅ」 「婆っちゃん・・・」 「ほっほっ、もう好きな男でもおるんじゃろぅ?」 「え・・・やですよ!」 |
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「ほっほっ、ええのぅ若いモンは」 「女将さんが戻ったらの、川向こうのババはまだ くたばりそうでないと言うといておくれな。 何年かぶりに来てみて、 女将さんのええ宝物を見して貰ったとのぉ」 ( およね・・・婆さん・・・・ ) |
「いっひひひひ・・・・・」 「あら、おまいさん何書いてなさるんですか?」 「お? あぁ、なんでもねぇ。ちょいとな、相模の 美翔舞斎によ、また遊びがてら絵ぇ描きに来い ってな、こないだの絵がえれぇ高く売れたぞってな。 礼状でぃ。 あの野郎ォに上手ぇこと言って繋いどきゃあよ、 マキ五郎も色々具合ええこともあンだろう」 「そんなこと言って、枕絵の新しいのを催促して るんじゃないでしょうね? 火鉢の下からあたしゃ 五枚見付けましたよ! いやらしい!」 「げっ! なんでお前・・・・!」 |
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「おい、てめぇらヒマだろう、旨ぇモン喰いに行かねぇか」 「ぅお! ホントでやすか、親分?」 「そうさなぁ、まざぁ寿司から行くか、そのあたぁ ごった焼き喰ってよ、ソバ喰ってよ・・・・酒も浴びるほど 飲ましてやる。ほんでもって仕上げは女将の焼き団子 十人前でぇ」 「ぅひゃあー! なんですかい、姐さんに改めて惚れられ ちまったとか?」 「いや、枕絵見付けられてよぉ、叱られてよぉ」 「はぁ、そりゃまた災難で・・・・じゃ、どんなええ事が?」 「ん〜・・・・ちょいとな、頼まれてくれぇ・・・」 |
「おひか・・・・」 「はい・・・・何ですか」 「あんた、独り立ちしな」 「えっ!」 「練りも焼きも、味も・・・あんたはあたしの団子を 客に出せるんだ。もう銭取れるんだよ」 「そ、そんな!」 「御高倶山で商売するんだ」 「ええっ?!」 |
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「親分とおほのさんから聞いたんだよ。 あン人・・・好いてくれてるそうじゃないか」 「あの・・・あたしも・・・おほのさんから・・・」 「そうかい、なら話ぁ早いじゃないか。 なにぐずぐずしてるんだい。行っといで」 「女将さん・・・!」 「あン人はね、もうじき堅気になるんだよ。おひかが 向こうで商売始めるなら、きっと喜んで手伝って くれるさ」 「でも・・・あの・・・」 「こっちの事は心配しなさんな。それよりね、あんたが 幸せンなって、受け継いだあたしの味を向こうで広めて 欲しいんだよ」 |
「あたしで・・・こんなあたしでいいんですか? 女将さんの暖簾分けになるんですよ?」 「ああ、いいさ! あたしゃ自分の娘にしか暖簾は 分けてやるつもりゃないよ」 「おほのさんに言われました。向こうへ行っても 女将さんの手伝いになることはもっと出来るんだって。 川向こうの婆っちゃんは・・・達者で居さえすればって、 自慢の・・・自慢のおっ母さんだって・・・!」 「な・・・泣くこたぁあるかい! ば、バカ!」 「女将さん!」 |
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「いいかい、あっちにゃ決め手のタコぁ無いんだ。 その代わり旬のモノを使いな。色々試してみりゃあ いい。ヤマイモも練りのつなぎに入れて御覧・・・。 あ、秋にゃ・・・・香りのマッタケなんて・・・」 「女将さん・・・!」 「あたしの自慢の娘だ、ヘタ打つ訳ぁないじゃないか」 「はい・・・!」 「いずれあン人からあたしに知らせが届くだろう。 そん時ゃおひかが輿入れする時だ。世間に恥じない 立派な花嫁衣装を支度してやるからね」 |
「押し掛け女房だけどね、後ろにゃあたしや なぎ次郎親分が付いてるんだよ。はは・・・ こりゃちょいと断れないよねぇ。あはは・・・」 「は・・・はい!」 「そいでね・・・ひとつだけ頼みがあるんだけどさ。 明日の朝、陽が昇る前に発って欲しいんだよ。 あたしがまだ寝てる間にさ・・・」 「お、女将さん・・・!」 「いや、あの、ほれ・・・女の足じゃ半日以上は かかるだろうしさ。あたしも、その・・・・おひかの 後ろ姿見ンの・・・なんだかさ・・・ははは」 |
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「女将さん・・・!」 「ば、バカだねこの子は、泣くこたぁないって 言って・・・言ってるじゃないか!」 「あ・・・あたし・・・!」 「おほのさんに道順書いてもらってきたげるから」 「あたし・・・!」 |
「あたし・・・ここの娘として・・・ 明日発ちます。 あ、ありがとう、おっ母さん・・・!」 「お、おひか・・・! おまえ・・・!」 「おっ母さん!」 |
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「お、お、お、おほのさんトコ・・・ い、行ってくるよ! み、み、店・・・・頼んだよ!」 「ああ・・! い、い、忙しいねぇ・・・・! ううっ・・・・うううっ・・・・!」 |
「ありがとう・・・・」 「ありがとう・・・・おっ母さん!」 |
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「お、親分・・・! てぇへんでやす!」 「なんでぇ、騒々しい」 「べ、辺路寝湊から・・・客人でやす!」 「なんだとぉ? なぎ次郎が来たってのけぇ?」 「いえ、なぎ次郎親分の使いだとかで、 あの莉奈吉と志穂松が・・・!」 「ほぉ、今ンなってマッタケ山ぁ諦めきれねぇ ってんじゃねぇだろうなぁ?」 |
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「よぉ、遠いところ御苦労だな。まぁ楽にしてくんねぇ」 「お久しぶりに御座いやす。お忙しいところ申し訳 御座いやせん。なぎ次郎の使いでまかり越しやした」 「こないだぁ、おめぇさん達にゃめぇったぜ。ええ働き だ。なぎ次郎ぁ幸せモンだなぁ。跡目の襲名披露ぁ いつ頃になりそうでぇ?」 「へぇ、それにつきやしちゃあ、年ぁ明けてからとか」 「そうかぃ。で・・・・今日の用向きってなぁ?」 「へぃ、勝蔵親分に直にお渡しするようにと、書状を 預かってめぇりやした」 |
「ほぉ・・・どれどれ・・・・」 「ふむ・・・・・ふむ・・・・・ んんっ?! な、なんだと・・・・!」 「お、親分・・・何か無理難題でも押し付けて きやしたんで?」 「め、滅相もねぇ! ウチの親分ぁまさか そんなこたぁ・・・・! なぁ、志穂松」 「さ、さいでやす! そんなこたぁねぇと 思いやすが」 「ううっ! クッ・・・! なんてこった・・・!」 「親分! や、ヤルんですかい!?」 「ううう・・・・・・・・」 |
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「なぎ次郎ぁおめぇさん達にこれを託すに、 何か言っちゃいたかい?」 「いえ、喧嘩しに行くんじゃねぇもんで、くれぐれも しつれぇねぇようお渡ししろ、とだけ・・・・」 「そうけぇ・・・・いや、道中御苦労だった。勝蔵、 この書状確かに受け取ったぜ」 「へぃ! ありがとさんに御座いやす! それじゃ、あっしらこれで・・・御免下せぇやし」 「待ちねぃ、 おい! お客人方ぁ今夜ぁお泊まりだ! 裏の湯治場へ御案内しろぃ」 「えっ!」 |
「マッタケ焼いてな、酒を支度しな! トロロ汁もな! てめぇらもみんな今夜ぁお客人に辺路寝の面白ぇ話を 色々聞かせて貰え。久しぶりに大鍋の御高倶鍋でぇ。 酒蔵開けてオレのマムシ酒も出して来い」 「ええーっ!」 「はっはっ、そういうことでな、ゆっくりしてってくんな。 ウチの裏から湧き出る湯ぁそりゃあええ湯だぜぇ」 「あ、あの、勝蔵親分、あっしらぁ書状持って使いに めぇっただけでやす、ウチの親分ならぁともかく、 あっしらみてぇなモンにそれぁ・・・・!」 「何言ってやンでぃ、泣く子も黙る三羽烏の二人じゃ ねぇかぃ。 お! 跡目といやぁおめぇさんらのどっちが 継ぐんでぇ? それともハチマキのメグ蔵かぃ?」 |
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「いえ、あっしらぁ三人、ウチの親分と御一緒致しやす。 親分あってのあっしらでやすンで、この稼業からぁ身ィ退かせて 戴きやす。勝蔵親分にも色々教わりやして、ほんにありがとう 御座いやした。でやすから、この使ぇが仕事終いでやす」 「そうけぇ・・・・勿体無ぇなぁ・・・・そうけぇ・・・・。 ならよ、ますますおめぇさん達にこのままけぇって貰う訳にゃ いかねぇ。改めてオレから頼まぁ。そのオトコの心意気ってヤツ をよ、ウチのモンにじっくり聞かしてやってくんねぇ」 「も、勿体無ぇお言葉でやす・・・!」 「そうけぇ・・・そうだったのけぇ・・・・ おめぇさんらも・・・・終ぇんまでオトコを通しなすったなぁ」 |
喧嘩ぁおめぇさん負けたと言ったがよ、 意固地なことにかけちゃあ オレの負けだわな。 オレがええと思う花をよ、どうしても 受け取りそうにねぇんでな。めぇったぜ。 ( や、やめて下さい! ) ガシャーンッ! ( ウチの看板娘になにしてんだいっ! ) |
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( 芸者遊びしたいんなら浮月屋へでも行きな! 生憎だけどね、 真っ昼間から酒臭いヨタレモンに喰わせる モンなんかウチにゃ置いてやしないんだよ! お代なんか要らねぇや! 帰っとくれ! ここをどこだと思ってンだい!) ( おひかっ! 塩持って来なっ! ) |
( 可哀想に・・・・怖かったろう? ) ( 世の中にゃね、あんなことでしか 憂さ晴らし出来ない弱い人間もいるのさ ) ( 今度来たら、あんたの笑顔見せてやりな。 そうすりゃ、あいつ、絶対謝るからさ・・・ ) |
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( 親分達みたいにぶった斬ることは 出来ないけどさ・・・・それがあたしらの ダンビラなんだよ。看板なのさぁ・・・ ) だからよ・・・・ これ以上おめぇさんに花を 勧めるなぁやめにした。 あんまりしつけぇと、おめぇさん 鯉口切っちまいそうだからよ。 |
ただ、オレもよぉ・・・・ 喧嘩にゃ勝った事になってンだ。 オレの面子ってモノがあらぁな。 |
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そこでよ、 火薬玉ァ一発おめぇさんトコへ ぶち込んでやることにした。 へっへっ・・・・こいつぁ効くぜぇ。 いくら火薬玉放術に長けたおめぇさんでも こいつばかしぁ逃げられねぇぞ。 |
そうさなぁ、 ウチのモンがこれを届ける頃にゃ もうぼちぼち火薬玉もおめぇさんトコへ 落っこちるんじゃねぇかなぁ? いっひひひひ・・・ 中味ぁ花火でぃ。大輪の花火でぃ。 ざまぁみぁがれぃ! ガッハッハッハアー! |
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「むぅぅ・・・・・な、なぎ次郎の野郎ゥ!」 「よ、よけぇなことを・・・・・」 「・・・・・・あ、ありがとよ」 |
「おまいさん! 志穂松と莉奈吉から聞きましたよ! やっぱりおまいさんですよ! 天下のなぎ次郎ですよ!」 「何のことでぇ・・・・お、オレぁ知らねぇぜ」 「あの二人、大変なもてなしを受けてきたそうですよ」 「そ、そうけぇ。旨ぇモン喰ってきぁがったんだろうな」 「はい! 土産もたんと戴いてきてくれました」 「そうけぇ! そいつぁいいや」 「おまいさん、勝蔵親分とこには見事な湯治場が あるそうなんですよ。行きましょうよ!」 |
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「お、お、おい! なんでぇ、昼間っからよ!」 「いいじゃありませんか、おめでたい事尽くめで」 「そ、そうけぇ・・・ぐへへ・・・そ、それじゃよぉ、 あの枕絵のを今晩試してみるけぇ? いひひひ・・・」 「やですよ、もう・・・バカなんですからぁ!」 「よ、喜んでンじゃねぇかぁ? なぁ、おい? うひっ、うひひひひ・・・・」 |