■ このサイトはアニメの単なるファンサイトです。特定の個人・団体の
   著作権や利益を侵害する意志を持つものではありません。
   お気付きの点が御座いましたら、下記宛までお知らせ戴きたく存じます。

■ このサイトに関する全ての画像・テキストは転載を禁止します。







( ・・・みんな大丈夫かな・・・・? )


( ・・・お客さん、まだ二組しか来ない・・・・
  まだ喧嘩続いてるってことだよね・・・・ )








「どうしたァ、看板娘ぇ・・・?」

「いえ、あの・・・・」

「心配しなさんな、あン人達ゃ火事ン中へ飛び込んだって
生きて帰るよな人達さぁ。きっとみんな無傷でいるよ」

「・・・・はい」

「ここまで待ったんだ、こうなりゃ意地だよ、喧嘩見に
行った衆がどぉっと流れて来るまで開けてようじゃないか。
そうすりゃあんたの案じてるお人の様子も聞けるしさ」

「え? あ・・・はい・・・・」 






















「ぅわぁあっ! ひえぇ!」

「なにやってんでぇ!
なぎ次郎が突っ込んで来やがったじゃねぇか!」

「クソォ! あの野郎らわざとヤツの前に火薬玉ァ!」

「うへっ! 煙で見えねぇ! ヤツぁどこだ!」

「あややっ! 突っ切られたぞォ! 追えぇ!」

「野郎ォ! 通すか!」  
ガキィーン! チンッ!

  「ええぃ! どけぃ!」  
ザシュッ!

「ぐぁっ!」 








「志穂松ゥー! 西の藪っきわァ手薄だー!
あっちを突っ切れぃ! アレをやるぞーっ!」

「えっ! ホ、ホントですかぃ!」

「残りぁオレの一発だけでぃ!
おめぇにしか出来ねぇんだ! 行けぇーい!」

「い、いや、でもよ親分、ありゃあ!」

「うっせぇ! 
グダグダ言ってんなっ! 塞がれちまうぞーっ!」








「げっ!」

  「志穂松だな、くたばって貰うぜ!」

「や、野郎ォ! どきぁがれ!」

   
チンッ! ガィーンッ! キンッ! キンッ!

「このォ!」

  「やっちめぇ! ぷりくわぱんつだ!」













            「うぇ! あの・・・バカッ!」




        「なにやってんだ! おめぇはァ!」

             タタタタタ・・・・









     シュバッ!

     「ぎぇっ!」

「馬鹿野郎ゥ! てめぇ何やってんでぇ! 早く行けぇ!」

「そ、そんなこと言ってもよぉ、おめぇ・・・!」

「親分とおめぇにしか出来ねンだ! この野郎ォ!」

    
チィーン! ガィン!

「骨ァ拾ってやる! 行けぇ! 志穂松!」








「ク、クソォ! よ・・・よし!
      どうにでもなりぁがれぃ! 行くぞ!」

   「待てぇ! 野郎ォ! 通すか!」
   「志穂松ォ逃がすな! 斬れぇ!」




   「げっ! て、てめぇは莉奈吉ィ・・・!」

「相手ぁオレがしてやる! きぁがれ!」








「親分に遅れを取ンじゃねぇぞーっ!
                 行っけぇーー!」

     
ズバシュッ!

       「ぅわあぁ!」








「チッ! ・・・・なぎ次郎ォ! 派手に突っ切りやがったな! けど、そこまででぃ!」

「どけぇーっ! そいつァオレの獲物だァ! 待ちやがれ! なぎ次郎ぉぉぉーーー!」












  「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・お、遅れねぇさ!
                ・・・み、見てぁがれ!」

                  ・
                  ・
                  ・
                  ・
                  ・
                  ・
                  ・






( えっ! あっしにそれをやれってンですかぃ! )






「おぅよ! おめぇさ、おめぇでなきゃこいつぁ無理だ」

「な、なんでまたあっしにそんなヤベぇ事・・・!」

「メグ蔵でも莉奈吉でもな、力ぁ任せにやり過ぎる。
マキ五郎なんてなぁ器用さぁまったく無ぇしよ」

「し、しかしよ・・・親分、ちょいと間違やぁあっしゃ死に
やすぜ・・・!」

「そンために稽古しろってンじゃねぇか」

「む、無茶苦茶でやすよぉ〜!」

「無茶もヘチマもあるけぇ! やるんだよ!」








「噂じゃ御高倶山ぁ火薬玉ァ得意にしてるらしいじゃ
ねぇか。オレぁぶった斬る方が得意だけどよ、こちとら
も幾つかぁ用意しとかにゃなんねぇ」

「そりゃそうでやすが、こんなもなぁぶつけちまやぁいい
じゃねぇですかぃ」

「おめぇもこンめぇ勝蔵に会って分かンだろう? ヤツぁ
ぜってぇまともにゃ放ってこねぇぞ」

「へぇ・・・アタマの良さそな人でやしたからねぇ」

「だからよ、こいつぁ奥の手でぃ。しょっちゅうやれたぁ
言わねぇさ。 けど危ねぇ仕事だからよ、稽古だけぁ
しっかりやっとくんでぃ! 始めるぞ!」








「ああ、こんなトコにいたのかぇ。明日が出入り
だっていうのに、遅くまで何やってるんだい?」

「へぇ、道具の手入れと火薬玉の支度をしており
やしたんでさぁ。せいぜい五つしか出来ねぇ
でやすよ」

「これが火薬玉かい? これを投げ付けて爆ぜ
させるのかぇ。おっかない時勢だねぇ」

「へぇ、扱いが難しいんでさぁ。特にあっしゃ・・・」

「お前ここンところ毎晩遅くまで一人で稽古してる
じゃないかぇ。これの放り方を何遍もやってた
みたいだけど・・・。普通に放っちゃいけないの
かい?」

「誰にも出来ねぇ事をやらにゃなんねぇんでやすよ」








「喧嘩の最中に取り囲まれて身動き出来ねぇコトも
あるんでやすよ。こいつを放りたくても放れねぇんで、
そんなときゃ味方の誰かに放り渡さにゃなんねぇんで
やす」

「おっかないねぇ、爆ぜないように受け取れるのかい?」

「でぇ丈夫でやすよ。やんわらかく受けりゃええんで、
そいつぁ何とでもなりやす。あっしのやるこたぁもちっと
やっけぇで難しンでさぁ」

「な、何をしようってンだい?」

「やんわらかく受けてそれでまたてめぇの体勢整え
直して・・・なんてことしてる暇を敵の野郎共にやらねン
でさぁ。う〜ん、羽根つきの要領でやすかね」

「お、お前、放ってきたこんな物を叩くのかぇ!」

「爆ぜねぇギリギリの強さで受けるんでさ。そいで
そのまま振りかぶらねぇで一気に放りやす。
ハタから見りゃぶっ叩いたように見える筈でやす。
あまりの速さに敵の目が付いて来れねンでさぁ」








「なんてことを! 志穂松! そんなことおやめ!
爆ぜたらお前・・・お前・・・!」

「へぇ、あっしも最初はおっかねぇばかりで・・・。
けど、こいつを見て下せぇ。熟した柿で稽古したんで
さぁ。若ぇ衆にこの熟し柿を思いっきりぶつけてもらい
やしてね。この前一度だけ本物使って受け返して
みたんでやすがね。親分相手に上手くいきやした」

「いけません! ウチの人もウチの人だよ、なんて
ことさせるのかね! あたしが言ってあげます。
いいね、これはおやめ!」

「待って下せぇ、姐さん。こいつぁ喧嘩で使うかどうか
も決めてやせんし、あっし一人でやるモンでもねぇん
でさぁ。投げて来る相方ぁ親分以外に出来やせん
から、親分がやると言いなさらねぇ限り日の目見る
こたぁねぇんでやす」


「それならウチの人に言っときます! まったく
何を考えてんのか・・・!」








「それよりお前、長い間御苦労だったねぇ。お前が
居てくれたんでどれだけ家ン中が明るかったことか。
若い衆が辛抱出来たのもお前のおかげだよ」

「へぇ、あっしでも何かのお役に立ったンでやすか」

「何を言ってるんだい。湊に船が着いて御覧な、
船の衆は真っ先お前に会いに来るじゃないか。
お前の人を惹き付ける力は財産なんだよ。いつ
までもそのままのお前でいておくれ」

「へ、へぇ・・・なんか姐さんにそう言われりゃ、なん
ともありがてぇでやすが・・・。あっしの方こそ姐さん
にゃ字ィ教えて貰いやして、忙しいに申し訳ねぇと
常々思ってやした。ありがとう御座いやした」

「一番熱心に習ってくれたからねぇ。お前は覚えも
早かったよ。あぁ、そうそう、これをお前に貰って欲し
くてね、持って来たんだよ」

「あ! こ、こりゃあ! 姐さん・・・!」








「お前、以前に牛若丸の話を読んでみたいって
言ってたじゃないか。綺麗なのが手に入ったんで
大事に取っといたんだよ」

「うう・・・うう・・・」

「志穂松・・・?」









「・・・・す、すまねぇ・・・・すまねぇ・・・・姐さん、
こんなあっしに・・・・覚えてて下すったんで・・・」

「そんなに・・・・欲しかったのかい?」

「話ァてぇげぇ知ってンでやす。てめぇで・・・・
読みモンをてめぇの目で読んで・・・!
・・・・腹に入れたかったでやす! 
姐さんから習った覚えで・・・・・
読みモン読むってことしたかったでやす!
あ、ありがとうごぜぇやす!」

「志穂松・・・・!」








「そうかい・・・・うんうん、そうだね・・・うう・・・」

「姐さん・・・!」

「さむらいの子でも、習わせているのに嫌がる
子が多いという・・・・
お前はなんて立派なんだろうね。・・・・うっ・・・」

「勿体ねぇ・・・あ、あっしみてぇなモンに・・・!」

「お読み、志穂松。 ウチで字ィ覚えたお前が
心ゆくまで読んどぉくれ・・・!」

「へぇ! でぇじにしやす! 何遍でもでぇじに
読ませていただきやす、姐さん・・・!」








「お前の終い喧嘩・・・・
無事に帰ってきとぉくれ、志穂松」

「へぃ」

「これを読むことも出来ないよな身体に
ならないどぉくれ。そんな子ならあたしゃ
これを渡しゃしなかったよ」

「へぃ・・・・」

「おまえが稽古してた火薬玉の扱いは
決してするんじゃないよ。約束しとぉくれ」

「へ・・・へぃ・・・・」

「死ぬんじゃないよ!
生きて帰っとくれ! お願いだよ、志穂松・・・!」








「も・・・勿体無ぇ・・・・!
あ、あっしにそんな・・・・姐さん・・・!」






・・・・お読み志穂松、心ゆくまで読んどくれ・・・!



・・・いいね、これはおやめ!







「姐さん・・・・! あっしみてぇなモンに・・・
泣いて下さりやして・・・・・」

「けど、今ぁ、今ぁ・・・!
あっしゃあ、ヤらにゃなンねぇんでやす!」

「お守り下せぇ! 姐さん!」




















「な、なぎ次郎!  野郎ォ、きぁがったぁ! 火薬玉持ってやがるぞォーっ!」

「クソッ! 砦周りの守り衆しか間に合わねぇ!」

「かまぁねぇ! 斬るしかねンでぃ! きぁがれなぎ次郎! オレ達の金ボシでぃ!」 
     








「何としても止めとけぇぇー! 今行くぅ!」

「なぎ次郎ォォ! てめぇはオレが叩っ斬る!」






サイトTOPへ お話TOPへ 前幕 次幕

第十七幕  奥の手



      
      恨み辛みぁ御座いやせんが 避けちゃ通れぬ勝負の掟  道具のダンビラぁ振り回し ケリをつけるが男の意気地