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ダダダダダ・・・! 「メグ蔵ぉおおおおーーーー! オレにもまわせぇえーーっ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」 |
( おぉっ、来たか、野郎め! ) 「莉奈吉ィーっ! マキ五郎の向こうへ回れぇーーっ!」 「わかったぁーっ! へぇるぞー! こンの野郎ォォー!」 ブワッ! ギャイーン! ズバッ! ビシュッ! 「ぅわおっ!」 「ぎえっ!」 「り、り、り、莉奈吉もきぁがったぁーっ!」 |
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「マキ五郎ぉおおーー! 莉奈吉の方へ引き摺れぇぇーーっ!」 「おわっ! 莉奈吉兄貴がっ? ありがてぇ!」 「いくぜぇー! そりゃあああーー!」 キンッ! ガッ! バシュッ! ズバッ! 「ぐわっ!」 「まじぃぞ! そこの奴等も来い!」 「頭数で行け! 蒸し殺せぇ!」 |
「でやぁあああーー!」 シュバッ! ビシュッ! 「げぇ!」 「なにやってんでぇ! もっと人数掻き集めろぃ! 囲め、囲めっ!」 「ひぃぃ!」 「馬鹿野郎! 一人で掛かるんじゃねぇ!」 |
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「姐さん! あんなところに・・・!」 「あっしらを・・・・・?」 |
案じて下すって・・・・!![]() |
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「莉奈吉・・・お前に話があるんだよ。 ちょいとこちらへ来とぉくれ」 「へ? あっしでやすか?」 「そうだよ、忙しいのは分かってるから 手間は取らしゃしないよ」 「あ、あの・・・すいやせん。大福喰っちまったなぁ あっしでやすが、襖に落書きしたなぁあっしじゃねぇ んで・・・・」 「馬鹿だね、そんなことじゃないよ。そこへお座り」 「へ・・・へぇ・・・」 |
「今日はお代官様の騒ぎで、お前と志穂松が随分 機転効かしてくれたそうじゃないか。すまなかった ねぇ」 「いぇ、親分のしべぇがお上手だったんでさぁ。 おかげで明日ァ安心して芝草ヶ原に向けぇやす」 「それなんだけどね・・・ウチの人は明日で喧嘩終い にするんだけど、お前も本当に一緒ンなって足洗う のかい? ホントにそれでいいのかい?」 「なにおっしゃるんですかい、勿論でやすよ」 「義理立てしてくれるのは有り難いよ、でもお前の 人生だからね。後で悔いやしないかい? も一度 よく考えてみてもいいんじゃないかと思ってね」 |
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「姐さん、あっしら志穂松もメグ蔵も親分のお人柄に 惚れてお傍に置いて貰いやしたんでさぁ。頭が退きゃ 尻尾も退くんでやす」 「こんな身分でなかったらねぇ、お前は町道場でも 出来るくらいの腕を持ってるのにと思うと、この稼業の 哀しさが身に浸みるよ。ウチの人が死なずに来れた のもお前のおかげだしね」 「あっしのヤッパ捌きぁ用心棒先生の受け売りでさぁ。 先代が一時期面倒みなすった鈴木野一郎衛門毬茄 先生にあの頃チコっと習いやしたもんで」 「本来なら美墨一家の三羽烏と言われるお前達の誰か に一家継いで貰うのが筋なんだよ」 |
「ウチの人に言っても、頑として聞き入れちゃくれ なかったんだよ。奴等はそんなこと望みゃしない、 ってね・・・」 「・・・・・さ、さいでやすか・・・・うっ・・・」 「許しとくれ、あたしじゃ何の力にもなれなくて・・・」 「違いやす・・・嬉しいンでさ! やっぱり親分、 あっしらのこたぁよおっく分かって下すった・・・・! その通りなんスよ、姐さん。あっしらそんなこたぁ 何にも望んじゃおりやせん。跡目をマキ五郎にして 貰えたってんで、メグ蔵のヤツぁ祝い酒かっ喰らって ひと晩泣いてやした。嬉しかったんでさぁ」 |
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「へへ・・・おこがましンでやすがね、それがあっしらの 心意気ってモンでやすよ。なぎ次郎って一人の親分の 支えンなれたんじゃ、それで本望なんでさぁ。それに、 一家ぁ若げぇりするんに丁度ええ時機でやすし」 「ありがとう、莉奈吉・・・・ウチの人は幸せ者だよ」 「そんなこと・・・よしておくんなせぇ、姐さん」 「お前はこの後どうするんだい?」 「へぇ、しばらく諸国をほっつき歩いてみようかとも 思ったんでやすがね・・・・」 |
「風の便りじゃあお袋がめっきり歳ィ喰ったらしい んで、けぇってやろうかな・・・と」 「お前! おっ母さんが達者でいなさるのかえ! どうして今迄言ってくれなかったんだい。どこに?」 「へぇ、クニの高清水村でさぁ。妹が付いててくれ やすんで、盆正月と彼岸めぇにゃ仕送りを若ぇモン に届けさしちゃいたんでやすがね」 「なんてことだい! そんな大事な事どうしてあたしに 黙ってたんだい! そんな・・・・おっ母さんに顔向け 出来ゃしないじゃないか・・・。お前みたいな働き盛りの 子を預かってるというのに!」 |
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「いや、あの・・・ほれ、姐さんに知られちまやぁ、 色々気ィ遣って下さるンに違ぇ無ぇし、そんなこって 要らん気遣ぇしなすったんじゃ、あっしも居辛ぇんで ・・・こいつばかしゃ親分にも黙ってやして・・・・・ へへ・・・す、すいやせん」 「ま、まったく・・・なんて・・・・なんて子だよ、お前は」 「す、すいやせん・・・・・」 「勘弁しとぉくれ・・・・気付いてあげられなかった・・・ どうか・・・・、勘弁しとぉくれ!」 「あ、姐さん! なんてことなさるんで!」 「この通りだよ・・・莉奈吉! 堪忍しとぉくれ・・・!」 「あ、姐さん・・・・!」 |
「そうかい、人知れず仕送りしてたのかぇ・・・ なんて健気な子だろうね・・・・うう・・・・。 ウチの給金 じゃお前の酒代も辛かったろうにね・・・」 「ああ、た、高清水村に帰るんだろ? ちょいとお待ち。 あそこにゃね、あたしの婆様が昔助けた知り合いが 材木商いしてるんだよ。お前の身の上書きと雪城屋 の挨拶状を書いてあげるから、持ってお行き」 「え? そりゃあ・・・」 「それならおっ母さんと一緒に居てあげられるだろ? それとね、もう一通はおっ母さんに渡しとくれ。これは あたしからお前のおっ母さんに・・・お詫びだよ」 「そ、そんな事まで・・・・姐さん・・・!」 「お前は随分字ぃ読めるようになったから、おっ母さん に読んであげておくれよ」 「うう・・・すいやせん・・・・こんなあっしに!」 「申し訳ないのはあたしだよ・・・。お前は腕っ節ばかり 目立つけど、ホントは優しい子だって分かっていたの にね、気付いていてあげれば・・・・・。 |
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「お前、みんなに内緒で迷子の子狸飼ってただろ? よくお山に戻してあげたね。 情けあるお前のことだから 手放す時ゃさぞかし辛かったんじゃないかぇ・・・?」 「し、知ってらしたんで・・・・!?」 「毎日残飯を大事そうに抱えて走ってったからね」 「あ、ありがとう御座いやす・・・!」 「帰る日が決まったら言うんだよ。若い衆にここの 土産を揃えさせるからね」 「いえ、あの・・・・あ、ありがとう御座いやす」 |
「お前は腕が立つから、あちこちから用心棒の誘いが あるかもしれない。けどね、あたしゃ・・・・」 「でぇ丈夫でやす、姐さん。あっしゃあなぎ次郎親分と 一緒でなきゃヤッパ振り回すつもりゃありやせん」 「そうかい・・・・。それじゃ、明日の喧嘩・・・・」 「へぇ」 「死ぬんじゃないよ! 斬られんじゃないよ! 莉奈吉!」 「あ、姐さん・・・・!」 「あたしに約束しとぉくれ!」 「・・・へ、ヘぇ・・・!」 |
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「勿体無ぇ・・・! ありがとう御座いやす・・・ 今迄の御恩・・・・わ、忘れやせん・・・・姐さん!」 |
・・・・よくお山に戻してあげたね・・・・![]() ・・・・辛かったんじゃないかぇ・・・? |
「クッ!・・・・姐さん」 「かれぇりゃあす・・・・美味しゅう御座いやした! 見てておくんなせぇ、親分にゃ指一本触れさしゃ しやせんぜ!」 「うぉりゃあああーーー!!」 |
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「死んじゃいけねぇと・・・ ありがてぇお言葉受けた莉奈吉の・・・! これがせめても姐さんに見て戴く・・・・!」 |
「 鈴木野一郎衛門毬茄先生直伝・・・!」 | ![]() |
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「『しなり払い』のひと筋でぃーーーっ!」 「どぅわあああーーーっ!」 シュバァーッ! 「ぐわぁ!」 「ぎえぇ!」 「がはっ!」 |
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ジャリーン! カンッ! キンッ! ボグツ! 「ぅおっ!」 「はぁ、はぁ・・・・い、いよいよ斬れねぇ! クソッ、このダンビラぁ!」 「野郎ォ!」 ガィーン! 「はぁ、はぁ・・・・あ、兄貴らぁーっ! 玉ァ残ってンなァ?! 今使うぞォーっ!」 |
「なにぃ! ここでか!?」 「道具ァもう駄目でぃ! 親分の飛び込んでくる 鼻っ先へぶち込めぁいい! 奴等ぜってぇ分かれて 散るぅ!」 「そいつぁちょいと間違やぁ・・・おめぇ!」 「でぇ丈夫だぁ! 親分なら煙幕ぐれぇ突っ込んで来らァ!」 |
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「もうそこまで来てンでぃ! 早くしろォ! いっぺんぐれぇオレの言うこと聞きやがれ! このクソ兄貴らァっ! 仲間ァ信じろってたなぁ兄貴らじゃねぇかァ! 自信ねぇのかーっ! コノヤロォーッ!」 「おほっ!」 「こいつぁめぇったァ!」 |
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「その通りでぃ!」 「てめぇに仕切られりゃ言うこたねぇーーっ!」 「うりゃぁ!」 「どわぁ!」 ズドーンッ! ドカーンッ! |
「喰らいぁがれぃ!」 ボカーンッ! |
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「ぅおっ! 派手なことしぁがる! オレに当たったらどうしてくれるんでぃ! けど、いい花道じゃねぇけぇ! 上等だぁ!」 「てめぇらぁ! いい仕事だぁーーっ! もちっと持ち堪えてろよォ! 志穂松ゥ! 来てるなァ?!」 「ヘィ! 行きやすぜ!」 「あの野郎共のくれた花道でぃ! 突っ込めぇ!」 「おおぅ!」 |