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就職

 日が落ちると冷える。冬なのだから当たり前だ。熱めの湯船に茹だるほど浸かって、風呂上がりに燗酒をヤる。どうせ安い酒だ、温もりゃあいい、というのでグビグビ呷る。

 ニュースでは大卒の就職内定率が極めて悪いと報じている。一方、企業では外国人採用を増やしているのだと言っている。海外進出に向けた即戦力になり得るという選択だ。それだけ企業の目は日本人卒業生に対しては厳しい。単にそのまま外国語が使える即戦力というだけではなさそうだ。その人の活力、やる気概にも平均的な違いがあるのではないだろうか。

 無論、大学生も様々だろうし、こいつはいいという人材も多かろう。よく解らないが、その本人の能力、人間力に於いてけっこう格差が大きくなっているのかもしれない。それは大学で何をしてきたのかにもよるだろうし、幼い頃からの家庭環境にもよるだろう。
 企業が食指を伸ばさないというのは食わず嫌いなのではない。喰ってみて「こりゃかなわん」という思いをすれば、次からは「要らない」と言う。ここ何年間かに亘って味わってみた判断に違いない。先輩連中がろくでもないから企業の門戸が閉ざされるのだと、一概にそれだけではないにしても、何年間かの傾向というものを企業は掴んでいる筈だ。

 学校出たのに思い通りに贅沢な就職が出来ないという状況は確かに気の毒には思うが、選り好みもさほど出来ぬ世の中である事実も少しアタマの片隅に置いておくべきではないのか。世の中は自分中心に回っているのではないのだし、フリーターやりながら西村さんのように芥川賞でも狙える才も持ち合わせてはいまい。先行き見えぬ世界情勢故、大樹の陰に寄りたいのは解るものの、何かしらで喰ってゆかねば何も始まらないだろう。