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大雨

 TVニュースでもコメントがあったが、奄美地方は例年台風の通り道でもある。そこの人達が茫然とするくらいの急激な大雨だ。降り始めから45時間で降雨累計量818mmという数字は、20mm/h 近い降雨が1秒たりとも休まず45時間降り続けるのと変わらない。実際は小降りになったり少しの間やんでみたり、また130mm/h などというとてつもない降り方をしているらしい。それではどのような排水施設も追い付きはしない。防災施設、排水構造物の大きさを設計するに、こんな大雨は想定していないだろう。

 2日間で3ヶ月分の雨が降ったのでは山肌が崩れない方がおかしい。崩れて道路や水路を塞げば流水の瀬が変わる。予想もしないところに濁流が押し寄せる。普段から降雨流水に見舞われない部分は情け無いほどにもろい。日常は水に洗われない箇所が次々に破壊されていく。これも人間にとっては想定外だ。周囲の景色が一変してしまう予期せぬ出来事は人を狼狽えさせ、パニックに陥れる。

 濁流が弱い箇所を選んでそちらに流れ込むように、災害は体力の弱い者から飲み込んでいく。幼児には大抵大人が付いているが、年寄りだけの家庭、とりわけ一人暮らし老人は逃げ遅れる。やまぬ豪雨なればヘリも出せず道が寸断されれば土地の消防団とて近付けない。早くに避難態勢を強いていればとよく言われがちだが、よもやこれほどの降雨量をどれだけの人間が予測出来たろうか。幾度も台風に見舞われながら長年それに耐えてきた地区の人々ならば尚更だろう。それだけ、「まさか」 の大雨であるに違いない。これ以上の被害死亡者が出ないことを祈りたい。