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除染

 震災の日、各地で被災者追悼式典が催されたり黙祷する姿なりがある。 忘れまいぞ、あの凄惨な出来事をと意を新たにする人も多い筈。
 普段は政局の追っ掛けばかりやっているメディアもこの日は二年前の出来事を取り上げる。 復興が進んでいない現状を流し、政府と役所を叩く。 お前達報道屋は年に一度それを報じてくれるのか、ありがたいことだなと皮肉のひとつも口に出したくなる。

 縦割り行政が悪いとか前の政府が無能だからとか、それは復興遅延要因は幾重にも絡み合っているだろう。 それもこれも、元を辿れば復興特需目当ての利権争奪が根底にあるからではないのか。 役所も政治屋も業者も、全て復興予算を懐に入れたいダニのような者共なのだから、当の被災者達の現状や将来をどれだけ考えているのか知れたものではない。

 海岸線を全て防潮の堤で遮ってしまえだの、ウチの原発はホレこのとおり鋼鉄の壁を築造していますから安心ですよだの、今では小学生でもそのような短絡的発想はしないように思われる。 そんな計画で将来の安心が得られるならば、酔っ払った私の戯れ言のように日本の領海沿いを海底から突き出した壁で取り囲んでしまえばいいという、ナンセンス漫画的発想が実施されることになる。

 震災直後から言われている 「除染」 という行為を私はずっと訝しく思っていた。 除染が一向に進まないとされるが、あの除染というのは何を指すのか、規模も考え方もさっぱり解らない。
 考えてもみよ、放射性物質が広範囲に亘って撒き散らかされているわけだろう。 満遍なくだ。 何百mもある山の頂上から村里、田畑、市街地から海岸まで、それを人力で洗い流そうというのか。 高圧洗浄機とデッキブラシと雑巾でだ。 馬鹿も休み休みに言えとはこのことだ。
 里山の枯葉を一生懸命に集めている。 常緑樹はどうするのだ。 広大な山林の全ての枝の全ての葉っぱを一枚一枚洗えというのか。
 本気で除染しましょう、すぐに安全な土地に致しますというのであれば、何百、何千ヘクタールなその広域をミカンの皮を剥くように全てめくり取ってしまわねばならない。 それこそギャグマンガで不可能だ。

 しでかした害の大きさに手の打ち様もないためか、とりあえず洗います、皆様が再びあの地で生活できるように致しますという、効果の当てもない取り繕いでしかあるまい。 日本は中国とは違うのだ。 そのようないい加減な誤魔化しでガス抜きになると踏まれたのでは、被災地もえらく甘く見られたものではないか。

 除染が進まない? あたりまえだ。 住宅屋根と舗装道路を洗って学校の校庭を一皮めくる程度しか出来やしないのは、除染を言い出した連中が一番良く解っている。 やりました、努力はしましたがこれ以上は・・・・というストーリーなのだろう。