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サルもお縄か

 三島でサルが捕獲されたという。20万貰えるなら我が家へ侵入して欲しかったと羨んでいる奥様がもしもいるなら、それは我が家が被害家庭でなく幸運だったと考えるべきではないか。今回捕まった部屋はどのような状況だったのか分からないが、どの御家庭もモノの無い殺風景な独房を思わせる部屋などありはしない。下手に暴れられてぐちゃぐちゃに引っ掻き回されたのでは、直下型地震に見舞われた部屋も同然の有様になってしまうではないか。不幸にも台所であったなら目も当てられず、最悪の場合はガス漏れのような事態になりかねない。

 このサルも 「凶暴ザル」 だ 「噛み付きザル」 だと、散々な言われようだ。さもありなん、ただそこに突っ立っているオバサンの背後にいきなり襲い掛かるのでは、人間にとって通り魔被害と変わらない。住宅街を徘徊しているのは美味そうなものもあるのだろう、居心地悪ければ好きこのんで人間臭い場所にいつまでもいないわいと開き直りそうだ。
 捕獲網を持った警察官やら住民等に追い回されてもその界隈がいいのか。山に帰る方向すらもう分からなくなっているのかもしれない。帰りたいけど帰れない・・・と屋根の上から赤い夕日を眺めては “誰か故郷を思わザル” であったのだろうか。

 はぐれたサルなのか、集団行動中に置いてきぼりにされたのか、性格に問題があり過ぎて群れを追い出されたのか、はたまた世を儚んで無宿渡世の道を選んだのか。山深くに戻してやって運良く群れに再会できたとしても、このサルの将来は爪弾きにされるのが関の山に思える。権力闘争などには到底加われそうにない。孤独でしがない裏街道人生になってしまったのは事実だろう。


 ドングリの実が極めて少ないのでクマも民家周辺に下りてくる。田圃の様子を見に行った老人が襲われたりする。果樹園などは格好のターゲットだ。収穫前の農家は対策に頭が痛い。民家に押し入り、漬け物桶をひっくり返して漁ったりもするらしい。
 野良仕事から戻るとクマが台所に座り込んでいて、「おい、このぬか漬けはマズイな。ここの嫁はロクなもんじゃねぇ」 なんていいながら漬け物をバリボリ喰っているかもしれない。「おめぇ、ちゃんとぬか床混ぜてやってンのか? ちょいとビール入れて混ぜてみろ」 などと教えてくれるならまだしも、いきなりあの手爪でぐわっとやられたのではたまらない。

 クマもイノシシも死活問題だから里に下りてくる。それは無理もない。かといってお山の獣に怯えながらの生活も困る。里山の整備を放棄してきたからいかんのだと声が上がる。それはそうかもしれないが、その昔は国策で杉檜を植林させ、やがては外材に値段負けして今の山林荒廃になっている。菅内閣は林業の復活をと唱えているが、補助の名目でバラマキ政策を続けたところで荒廃規模が規模だけに焼け石に水のような気がする。
 それより先に緊急の課題があるだろう。土地は持っているが管理出来ず、税金も払えない。その結果は中国人や暴力団に平然と土地を売り捌いている現実があるではないか。これを早急に食い止めねば獣被害の比ではなく、山林荒廃どころの問題ではなくなろう。