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地元首長の構え

 経済界を脅しまくって関西広域連合の足元を蹴飛ばし、敗北宣言に似たコメントを引き出すまでにこぎつけた政府のゴリ押しだったが、その大飯原発再稼働のGOサインがなかなか出ない。 というより、出すタイミングが見つからないのか。

 地元おおい町には札束ちらつかせるだけでクリア、ハエの如くうるさい関西広域連合には地元企業を脅かして足元を崩し、一挙に反再稼働トーンを下げさせた。 そこまでは計画通りに事が運んだ。
 だがここへきて、福井県知事が先を見据えた国家の原子力政策を首相が国民に説明せよと迫り始めた。 なんだあいつは、県に銭だけくれてやりゃあ素直にしてるんじゃなかったのかと、政府や霞ヶ関としては面白くない。 あたりまえだ、国は立地地元をナメ過ぎている。

 世界が震え上がったフクシマの真の原因究明も収束への確かな道筋も見えぬ中、地獄を見た経験からなる安全対策が施されているとは到底言えぬ大飯原発を、今ここになにがなんでも再稼働させ、なし崩しに原子力ムラの利権安泰を図っているのは立地地元である福井県もおおい町も充分承知している。

 国は二言目には 「地元の御理解が得られれば・・・」 と付け加える。 そう言いながら片手で札束を掴み、それで横っ面を張り飛ばしに来る。 地元了解、地元要望を 「錦の御旗」 にしたいのだ。 いいな、お前達は快く了承したのだからな、と睨みを利かす。

 もはや原発無しでは喰えぬ地元であるならば、住民の声からも財政事情からも落としどころはおのずと決まってくる。 しかしひとたび事あれば、地元だけでなく周辺他府県への広域被害も目に見えており、広大な土地の放棄、長期に亘る住民避難や風評被害等も想定すれば、いささか足もすくむ。 とてもじゃないが、快諾など出来るわけがない。

 当該地元にとってこのような重大決断を為すに、国策である以上は何が起ころうとも責任は国にあるという事を明確にしておく必要がある。 あのとき再稼働を促したのは他ならぬ地元ではないか、との批判が将来にあってはならない。 それだけは断固避けねばならん。 地元首長としては当然の構えだ。
 総理の口から国民に解り易く原発政策の展望を説明せよとは、総理にとって泣き所で、政策も展望もありはしないのだから、まことに嫌な突っ込みに違いない。 使用済み核燃料をどうするのか? 肝心のそれさえ方針のないまま、利権第一の原発再稼働なのだから。