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センバツが始まった

 春の選抜甲子園大会が始まった。 「泣くな別所、選抜の華」 なんて言われた大投手がいたそうだが、自分が生まれてもいないそんな昔の事は当然知らない。 とんでもない化けモンみたいな投手が現れたと大人達が騒いでいたのが作新の江川卓だったり、今や解説者となって報道STAなんかで喋っている工藤公康が絶妙のカーブコントロールで面白いように三振の山を築き、ノーヒットノーランをやってのけた辺りがせいぜい子供心からの古い記憶だ。

 が、緑の外野芝生に飛んだ白いボールを追って選手達が走り回り、グランドの土に汚れたユニフォームを見ると、観戦の楽しみもあるけれど、今や季節感を与えてもらっているのも事実。 天候不順なこの時季、できれば上々のコンディションでプレーさせてあげたいと思うのは大会関係者だけではないだろう。
 逆転して、勝ち急ぐ心理に突き動かされてしまったか、投手が制球できなくなった石巻工業は初戦突破かなわなかった。 それでも、これは悔し涙ではないとしたマネージャー女子生徒の言葉が印象的だ。 秋の大会で準優勝ならば、この夏こそはと手中に出来そうな目標に向かい励んでくれることだろう。

ファイル 230-1.jpg クロスゲームの月島青葉ちゃんの映像を想い出すのはこの選抜でなく夏の選手権で、それは物語がそうなっていることもあるし、青葉ちゃんと言えば夏の入道雲の下でなければ不似合いだ。
 女子の高野連では目下のところ参加校は10校に満たないそうだ。 それでも春の選抜、夏の選手権それぞれ大会が開かれている。 ただ、戦後の野球文化マスメディアの中で生きてきた両親に育てられた今の女子選手達にとって、我が国で高校野球をやる以上、自分達もあの大甲子園で野球をしてみたいと願ってやまないのではなかろうか。 サッカーの国立、ラグビーの花園と共に、高校球技の頂点を競う聖なる場所はやはり特別だろう。

 勝ち残らねばその場所に行けないという重みを共有するには、女子の連盟参加校が今のところ少なすぎる。 気の毒ながら、それは現実として後輩達のために今ある体制で精一杯プレーするしかない。 裾野である少年野球チームにはそれなりに女子がけっこう含まれているのだろうか。 最近は軟式で女子小中学生を集めたチームもポツポツあるらしい。
 彼女等の聖地たる硬式球場が誕生するのはまだかなり先のことだろうが、少子化の中、それでも高校女子球児は増えていくものと期待する。

ファイル 230-2.jpg 吾郎君の愛弟子であり彼に憧れる清水薫ちゃんは、青葉ちゃんのようなスーパーガールではないものの、幼い頃から吾郎君と共に大人になってゆく様がいい。 この子の魅力は、三船ドルフィンズでイージーフライも捕れない頃から花も恥じらう大学生になっても、その可愛らしい性格は変わらないというところではないか。 彼女が進学した高校にもしも女子硬式野球部があったなら、野球バカに野球で繋がっていたい彼女としては躊躇なく入部していただろうと思える初心な一途さ、そこが良いのである。