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滑空

 スキー・ジャンプ女子の高梨選手は15歳だという。 あなおそろしや、あの滑り台、いやさジャンプ台からエライ勢いで宙に飛び出すわけだ。 滑降という競技もアドレナリン出まくりそうだが、ジャンプ台の勾配はどのくらいなのか。 優に30°以上はありそうだから、高速道路の切り通し斜面勾配より急かもしれない、と思ってスポーツニュースを見ている。

 切り通し道路の側道から金網越しに見下ろせば、真っ逆さまに見える。 あんなところを滑り降りて100m彼方までムササビの如く滑空するのだ。 高所恐怖症でなくとも気絶しそうだ。 親父さんが選手だったらしい。 スキーを履かせて間もない頃にもう飛びたがったそうだから、その “血” ではあるのだろうけれど、元選手ならではの育成法が功を奏しているにも違いない。

 踏み切りのタイミングを覚えたとしても、前傾姿勢で飛び出さねばならない。 崖の先で頭から突っ込むようなものだ。 無論、初心者の少女にいきなりあのような高さから飛び出せとは練習させないだろうが、おそらく相当に怖い。

 なんともあどけない女の子が最高到達点を記録する。 そのギャップに戸惑い、驚き、そして感嘆するしかない。 モモンガ・沙羅ちゃん、当該競技のファンは将来を期待するかもしれないが、まずはさしあたり、大会で気持ち良く滑空することを楽しんでくれればと思う。 クソ度胸に欠けるオジサンは、大気に乗るグライダーのようなそのV字シルエットに、ただ見とれるばかり。