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トンズラ船長

 「機長、何をするんですか!」 の逆噴射機長を思い出してしまう豪華客船の船長。 羽田沖で逆噴射して墜落させたあの機長もイカれたような放心状態で、乗客より先にさっさと救命ボート上にいた。

 座礁させてしまったイタリア客船の船長はひとくちに言えば無責任。 危機を招いた張本人であるにもかかわらず、まず助けねばならぬ乗客を放っぽりだしての保身逃避。 板子一枚下地獄の船頭さん達は危機に際して最後に船を離れるのは自分であると日頃より心得ている。 船長が船を見限るのは全乗客、全乗務員を避難させ終わってからでなければならない。 資質を疑うというよりも、資質そのものを持ち合わせていないと言うべきか。

 新築の建物の中から有害放射線量だという。 ワァワァ報道しているが、そのようなことは当たり前だろう。 原発がイカれた時点で広域な土地も海も殺されたのだ。 誰も滅多に踏み入らない山岳地帯や里山の林にもけっこうな放射性物質がばら撒かれている。 そこの砕石もそこの腐葉土も海の鮮魚も汚染されていないと誰が言えるのか。
 月日が経つに連れ、放射性物質は山から平地へ、街へと流れて移動する。 最終的に行き着く先は海だ。 今でも深い部分に高濃度沈殿しているらしいが、陸より流入する以上、それはこの先部分的にまだ濃くなりそうだ。

 「直ちに人体への影響はない」 と言い続けた政府や、「事故は起きましたが私らの知ったことではない」 の態度をとり続ける電力屋と霞ヶ関は、いわばイタリア豪華客船の船長ではないか。 こやつらはこの船長をどうこうと非難はできまい。 振り返れば、事故直後に自分達だけ60kmも離れた土地に逃げていた役人もいたではないか。
 3.11の忌まわしい大津波被災の日、我が身を棄ててまで住民避難に努めた地方公務員や多くの民間人。 その行動は尊く、我々が彼等を忘れることはない。 関東軍じゃあるまいし、トンズラ船長のような原子力ムラの連中を考える度に、命を賭して救助にあたった人々を思わずにいられない。