ガタイがデカいだけではない。 脚力、重量感、高さ、キック力、ドイツやアメリカ選手に比べれば、なでしこの選手は身体能力の劣勢が瞭然だ。 スズメバチの襲撃に対して集団で蒸し殺しにかかるミツバチか。 ワンバック、モーガンといったスピードとパワーのアタックに必死の防戦を展開するなでしこ達は、高速突進してくる重戦車に果敢にも立ち向かう騎馬軍団のようでもあった。
耐えに耐え、凌ぎきって少ないチャンスをモノにした。 「勝って当然」 のアメリカチームに唯一心配な点があったとすれば、ちょこまかネズミの如く動き回るなでしこの素早いパス回しをどう封じ込めるかだったろう。 相手一人に対して1.5人から2人のディフェンスが功を奏した、とは日本選手の弁だが、実際、攻め込まれたアメリカチームのディフェンスは更にその上を行く防御態勢を敷いていた。 ボールキープでは圧倒的な優位にありながら、結局これが 「なでしこペース」 に持ち込まれており、後半はかなりバテていたのではないだろうか。
何故にこれほど泣けてくるのか。 未曽有の震災の悪夢、未だ癒えぬせいだろうか。 そうではあるまい。 震災は天災、なにくその根性で幾度も立ち直ってきた民族なのだ。 震災を機に次々と明らかになる国家規模の “膿” が暗雲を漂わせ、利権第一にして機能しない中央政治、中央行政への絶望があるのだ。 ひいては、国は大丈夫なのかとの崖っ淵感である。
それ故に、相手の半分ほどしかない小さな選手達がピッチを駆け回り、もはやここまでかという危機をも盛り返す姿に、人間の強さと未来への光明を見る。 澤も熊谷も、みんな、なんといい顔をしていることかと思う。 ああ我々はこんな顔が出来たのだと。
男泣きの佐々木監督は 「ちっちゃな娘達」 と自軍の選手を表現した。 身体能力の劣勢を精神力とスタミナで補って余りあった選手達への賛辞である。
なでしこジャパン・・・・。 山椒は小粒でピリリと辛い。 たわわに実った山椒を眺めつつ、君達は本当によくやってくれたと、ねぎらいを娘達に送りたい。