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この季節の雪

 犬は喜び庭駆け回り・・・という歌は、少なくともこの雪にあてはまらない。郵便物を手にして激しく降る雪の中をポストまで歩いて行った。なにもこの自分が出歩く時間に一生懸命降らんでもいいだろうと、苦々しく灰色の上空を見上げても仕方ない。黒っぽい身なりがあっという間に白くなってしまった。

 この季節、しかもこの南海の土地で降るそれはボタ雪でしかない。最初はみぞれだったので、こんなもの、濡れた上へ落ちてきたところでそのまま溶けて終わりだと軽視していたのだが、まだ真っ昼間だというのに気温は下がる一方で、道の上にも積もり始めた。この野郎、シャーベットのくせしぁがって一丁前に雪化粧屋を気取るのかい。

 これはかなわん、ますます激しく降ってきた。あまりの降りに視界も悪い。車道のクルマもライトを点灯させている。
 犬を連れた御婦人が寒そうに歩いていた。なにもこんなタイミングで散歩させにゃならんこともなかろうにと思うが、我が身を振り返れば他人様のことは言えぬ。
 重いくらいにボタボタ降り掛かる雪には犬も喜んでいそうでない。あの歌はもっと雪国のサラサラした積雪なのだろうと、薄いシャーベットに足跡を残してゆく寒そうな犬の尻を眺めていた。

 ただ、雪の降る日は世界が静かでいい。それに相手は所詮H2Oではないか。御苦労されていると聞く豪雪なら別だが、この程度なら明日には溶けて流れて乾いて終わりだ。 また降灰と噴石飛来でひどい目に遭われている方々を察すれば、なんとお気楽なことだろうか。

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