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INDEXⅡ 第18話

 ほんにまぁ、こっただえれぇモンどうやって使うだか? そうじゃそうじゃ、おい、ひとっ走り小学校行ってセンセ呼んで来いや、どうすりゃ動くだかさっぱり解ンねぇべさ・・・・・。

 その昔、三種の神器なる家電が田舎の町にも浸透し始めた頃には、全自動洗濯機を前に右往左往する神裂やオルソラ達と同じ光景がそこかしこで見られたことだろう。
 主電源が入った、それではと早速何か洗ってみたい。その衝動は今無理して洗わなくてもいいものを洗うはめにしてしまう。ここではありがたいことにシスター達が何の躊躇いもなく脱いでくれたが、昔の我が国ではおそらく子共達が裸に剥かれたのだろう。タライに洗濯板、そこへ砥石のようなでかい洗濯石鹸を擦り付けてゴシゴシやることもない。おおまさに神器じゃ、と人々は驚嘆の声を上げた。

 シスター達の黒いガウンや被りものは手で洗うに結構大変そうに思う。川で洗えばいいという発言から察すれば、川辺の石の上にべちゃっと置いて、そこらで拾ってきた流木でパンパン叩き洗いすることもあったのだろうか。着替えもなく下着裸でそれをやるとなれば道行く我々は目の保養をさせて貰えるが、藪の中から強姦魔でも飛び掛かってきたのでは助かったものではない。
ファイル 89-1.jpg 洗濯物として扱うに、彼女等のガウンはかなりかさばりそうだ。この自分の洗濯機なら2人分洗えるかどうかである。シスター4人分に神裂の帯を放り込んだとなれば、この機種はかなり大型なのだろう。下着姿となりその真白き肌を惜しげもなく視聴者に披露しつつ、取説に頼りながらもその機械本来の機能発揮にまで漕ぎ着けた彼女等には、厚く御礼申し上げると共に、絶大なる拍手を送って差し上げようではないか。

 宵闇に長剣を一閃煌めかせる精悍さも仁王立ちする凛々しさも、ここの神裂にはまるで無縁である。ゆかたの帯を奪われ、すっぽんぽんの裸体を曝して羞恥に赤面するおどけ役だ。真夏の花火大会に我等の目を惹くゆかた女性達はみなこのように下着を穿いてないのかと鼻の下伸ばす想像は、残念ながら当たっていない。妖しい羞恥をわざと求めるそのテの性癖を持つ人は別として、疎々たるゆかたや着物姿の和装麗人に今時下着無しの人はまずいまい。最近の下着はそのラインが表に浮き出ないようになっているのだ。
ファイル 89-2.jpg 冒頭に於けるアークビショップのあらわな濡れそぼりから始まって、シスター達の威勢良い脱ぎっぷりと下着無しの神裂と続き、ついでに10032号の縞パンツまで披露してくれる。なんともお色気サービスに満ちた第 18 話である。


 水上脚本にしてこれあり、とでも言おうか、美琴と10032号、アクセラレータとラストオーダーの掛け合いが素晴らしい。当麻君もアクセラレータも、共に迷子の子犬にまとわり付かれたような境遇に陥る。しかし彼等二人を対面させないところがまたミソで、物語は彼等の知らぬ処で意外な絡みを生みつつ進んでいるのがいい。

 「指輪」 と聞いて 「勝ち組」 に繋がるのか、10032号は奪われたゴーグルの件などすっ飛ばしてしまったようだ。そこで強引にも 「指輪を、ぜひ指輪を!」 と迫れないところが御坂の妹らしい性 (さが) である。身の上からなる性ならば、ひよこ饅頭を生き物として認識し、それが実験段階などと聞かされてにわかに怒り込み上げるのもまた然り。

 自身の過去に重ねられる悲しい誤認識は、アクセラレータとラストオーダーが小萌先生相手に見せた早とちりと同じである。彼等は脳を操作されない限り、死ぬまでその忌まわしい過去の記憶を背負ってゆかねばならない。ことアクセラレータに於いては、自分なりにそれをどう消化し決着付けるのかが今後のテーマなのだろう。黄泉川の接し方にも注目される。 クソッタレ! と吐き捨てても消せぬもどかしさ。彼にとって “鍵” はやはりラストオーダーの存在に違いない。
 
 そんなに 「妹」 って響きが好きか、と怒る御坂お姉さん。10032号でなくてもその僻み混じりのジェラシー・エネルギーは充分に感じ取れ、的を射た情報分析が可能だ。お姉さんはオバハンだなんて誰も思ってやしない。つまりは素直になれないのだなと、妹のセリフが鋭く胸をえぐる。やがては見透かされた狼狽を妹にからかわれる始末。お姉さんは立つ瀬無い。ラストオーダーが現れなければ美琴は10032号のオモチャにされていたことだろう。つくづく分かり易い反応のレールガンである。

ファイル 89-3.jpg 第 18 話はアクセラレータとラストオーダーのエピソードだ。この二人に黄泉川を加えた三人の語りはそれぞれ意味深く、そして重い。 心中を吐露する小さなラストオーダーが「あの人」と言い表す。ボロボロになったあの人を今度は自分が守ってやるのだと言う。ちっこいミサカにこんなセリフ吐かせるなど反則ではないかと、憎まれ口叩きながらたまらず泣けてくる。クソガキが、と毒突きつつも自由にならぬ脚で捜しに来たアクセラレータ、彼はそうするであろう事を知っているラストオーダー、それが今の彼等の繋がりだと簡単に片付けるには、我々はあまりにも彼等の物語を知りすぎている。

ファイル 89-4.jpg それ故に、人混みの中から “あの人” を見つけて手を振るチビミサカのあどけない姿は胸を打つ。雑踏を静まり返らせるかの如く自分の名を呼んでくれた彼のもとへ駆けゆく姿や、二人の兄がそれぞれの妹を見つけたかのような安堵、おいたの罰に連続チョップを与える仕草、そして並んで帰途に就く後ろ姿など、まるで欧州映画のラストシーンを見せられているかのようではないか。 この第 18 話、いやぁ、映画ってほっとにいいもんですね、と今は亡き水野晴郎を真似て感嘆に浸りたいくらいの一作である。

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