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INDEXⅡ 第17話

 OPも新しくなり、キャラの衣装も冬向きになった。既製品のコスプレ衣装では常盤台中学の制服が最も売れたのだとかいう話であるから、この冬制服もまた売れるだろうか。
 ただ、美琴や黒子の夏制服がそれだけ好かれたのには 「禁書目録」 という世界観の面白さやワラワラとゴキブリの様に登場した御坂妹達の同制服姿以外に、外伝作品である 「超電磁砲」 の人気要因も見逃せない。希代の名オープニングだと未だ感慨深い 「only my railgun」 を用いた傑作OPアニメーションがファンのハートを鷲掴みにした如く、御坂美琴ら娘達の躍動する姿が 「とある」 シリーズの屋台骨であるのは誰もが認めるところではないか。
 魔術で周囲を制するインデックスよりも、激しく跳んで回る美琴や黒子のアクションに目を奪われるのも無理はなく、白いシスター衣装より常盤台中学の制服の方が売れても不思議ではない。なにより、常盤台中の制服コスプレならば街中の何処を歩いたとて目立つものではなかろう。そのまま冠婚葬祭に参列したところで奇異な眼差しを向けられる心配もない筈だ。

 秘かに女性週刊誌を読み耽り、他のシスターズに内緒でダイエットしていたらしい19090号の目的は “勝ち組” を目指すものだったのか。その一体だけ天然オイルを入れて貰ったバトーのタチコマが脳裏に浮かぶ。
ファイル 85-1.jpg 淡泊で無表情な瞳。 それでもその目を皿のようにして、これで貴女も勝ち組の仲間入り! なんて見出しの記事を、背を丸めて週刊誌を隠しながらも食い入るように読んでいる19090号を想像すれば、可愛らしくもあるではないか。
 彼女が他の妹達からどのような仕打ちを受けたのかはさておき、揃ってリハビリを始められるまでに回復したのはめでたい。医師から冬服を渡されるシーンに於ける一連の可笑しさはミサカネットワークあればこそで、並列状態であるべき中になんでお前だけ内緒で気色良い情報を元にダイエットなんぞしやがって、という笑いだ。無表情のまま抑揚無く淡々と喋るセリフ故に可笑しさが一層際立っている。
 
 黄泉川のマンション入口、10032号とラストオーダーの掛け合いも見事だろう。幼児の 「駄々っ子交渉術」 とは上手い表現で、幼児の頃は深い思慮や策略など巡らせはしないが、おそらく大人共の反応を体感蓄積しているのではないか。無意識下で「大人はこうすればオチやすい」という信号がもしかして脳から発せられるのではないだろうか。しかし、溺愛を誘うほどに可愛らしく見える筈だなどと下衆な考えまでは無さそうに思える。何事にも手助けを必要とする幼い生き物の本能だろう。臭い芝居でそれを用いるラストオーダーに笑ってしまうではないか。

ファイル 85-2.jpg それは同姓には逆効果だと跳ね返す10032号。 そうなのか、女性には腹立たしいのかと考える。 要するに “ぶりっコ" は最も嫌われるという事なのだろう。確かにそのようなお嬢さんは女性の間で村八分にされやすい。いけ好かないヤツ、サイテーなのだ。そこまで知識の無かったラストオーダーの負けである。だが、ここでまた考える。ラストオーダーではなく、小萌先生ならばどうだろうかと想像してみる。

 説明不能な生き物とはまたひどい言われようで、細胞老化抑制の研究モルモットだと勘違いされるくだりは可笑しくもあり少し悲しい。この小萌先生ならば “ぶりっコ" にはほど遠く、むしろ必死に大人ぶって見せようとするこまっしゃくれたマセガキだと受け取られるかもしれない。
 彼女の良いところは真面目でひたむきな性格にある。よって、彼女が涙ながらに御坂妹のスカートを引っ張って訴えれば、万に一つゴーグルを貸して貰えるかもしれないではないか。想像してみて欲しい。ピンクの小さな彼女が泣きながら自分に縋る姿を。三日三晩メシ抜きになったとしても彼女の願いを叶えてあげたいと思うではないか。


 御坂美琴は 「超電磁砲」 では正真正銘の主役にて、大人びた落ち着きをも含む頼り甲斐あるオネエ様、カッコいいオネエ様が前面に押し出されていたが、「禁書目録」 に戻れば中学少女並の恋心、その稚拙で愛らしい露見が再び展開される。 にしても、第1期作と比べればその感情にややの膨らみが窺え、なるほど当麻君への思いも本人が気付いているや否や、その炎、体内でかなり大きく燃え始めているのかもしれない。
 何でも言うことを聞く罰ゲームなのだからと、あれをさせ、こういう事もさせて、ムフフフ・・・と、その日を夢見る毎夜の寝姿には、黒子の狂おしいまでの嫉妬もドス黒くはなるだろう。オネエ様の見ている夢はあの類人猿との淫らな絡みに違いないとでも想像するのだろうか。黒子ならかくなる妄想もあり得そうで、それなら毎夜寝付けまい。

ファイル 85-3.jpg 思えばかなり強引ではないか。まだイタリアにいる当麻君に釘を刺し、ここで捕まえたが百年目とばかり服従を要求、要求、また要求。 ハンディアンテナ、ペア加入の通話料割引で男女ペアならゲコ太ストラップ進呈のキャンペーン。これに目を付けたのは一挙両得を狙った渾身の企てだった。 が、しかし、毎度の事ながら自分の思いを悟られるのを極度に恐れる縮こまりは如何ともし難く、慌てふためく赤面狼狽の様は、情け無いかなそこでもう一歩踏み込む勇気を奮い起こせぬ少女の純情である。 美琴はこうでなくては、と期待を裏切らぬ展開である。 ただ、ひきつった顔のツーショットとはいえ幾枚かは写されているのだから、それをささやかな収穫とすればよい。最も寄り添った一枚は黒子に邪魔されてボツになり、あの時にどきまぎせずさっさと写してしまえばと後悔しても後の祭だ。 恋とは、ラブコメとは、そういうものなのだ美琴君。 だから面白いのではないか。


 水上清資による少年少女の恋心で想い出すのは 「GUNPARADE MARCH」 のTVアニメ版 「新たなる行軍歌」 だ。ツンツン娘を絵に描いたような芝村舞と草食系そのものなぽややんのラブコメは、胸キュンながら端々がとても可笑しくて好きだった。徹底的に情け無い少年とそれに苛立つ勇猛且つ頑固一徹な少女である。この二人が一緒になってしまえば、ぽややんの残り人生は間違いなく恐妻家として生きねばならんだろうと思わせる可笑しさがあった。
 水上はこの作品12話中で5話分を担当しているが、やはり見せどころ脚本として強く尾を引くのはラスト2話で、クリスマスの買い出し作戦から大晦日、新年に至るまでを描いた、誤解と思い込みによるすれ違い、そして痛恨のひとことに振り回される双方の葛藤と恋慕だろう。
 幻獣相手に人型戦車で戦う5121部隊の話でありながら、ああこれはこの両名のラブストーリーであったのだと印象付ける仕上がりには意表を突くものがあり、やや学園ドラマ的な様相を漂わせつつも大人びた判断と決断に至る最後の停電エピソードなどは両キャラクターを昇華せしめるばかりの出来だった。

 この 「禁書目録Ⅱ-第17話」 を見れば、美琴と当麻君が先行き一緒になったとして、やはり賑やかなどつき漫才の家庭になるのではと思わせる。学園都市に舞台を戻したこの第17話、美琴に黒子だけでなくお馴染みの華やかな面々が溢れかえっているのが嬉しい。また、ワンショットギャグではない水上脚本の可笑しさが随所に見受けられ、楽しめた一作でもあった。
 黒子がオネエ様の闘いを知る第6話と第7話も水上が書いており、バスルームで美琴から隠れて傷の手当てをするくだりや、結標淡希とサシのバトルなど、さすがに 「超電磁砲」 のシリーズ構成だと思わせる。水上清資には今後も美琴と黒子のコンビにその大いなる力量を発揮して貰いたい。

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