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大寒

 大寒の頃だけあって大気が冷たい。太平洋側は乾燥しきっているから洗濯物は乾きそうだが、潤いを欲しがる女性の肌にはあまり嬉しくない低湿度だ。 夏の収穫時にこれほど乾いていてくれれば楽でいいのにと愚痴りたくなる。

 各所で滝が凍り付いたとか、この厳寒で滝に打たれる行の様子などを見せられると、火のありがたさが身に浸みる。そういえば豆炭とか練炭の需要が少し増えているのだとか。最近は焚き火などさせてくれないから、表で火を焚いてその周りに人が集まるというコミュニケーションの場が無くなった。近所の者であれ通りすがりの者であれ、まぁおい、ちょいと温もっていけよ、という触れ合いが冬の風物詩だった。それから思えば寂しい話だし、火を扱うのは全てスイッチによる生活なので、我々は昔ほど上手に火を扱えなくなっているだろう。

 コンビニに入るとおでんの匂いが漂う。暖かい缶コーヒーの陳列前に立てば少しだけ熱が来る。おおこりゃあいいな、ゆるめのヒーターにならぁな、と両手をかざしていると隣のお嬢さんがニコリと笑う。けっこう美しきお嬢さん。手が冷たいですからねと、やや首を傾けた笑顔が女神に見える。それみろぃ、暖に浸ってればいいこともあらぁな。

 勘定払いながら、おい、こんだけ寒けりゃおでんも売れるんじゃないかい? と店のオバチャンに訊けば、それがね、寒すぎるとみんな寄り道しないで帰っちゃうし、年寄りの人も家から出て来ないんだよ、と小声の嘆き節。 なるほど、それはそうだ。

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