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ヨスガノソラ 一葉編

 殺風景な旧診察室に午後の陽明かり淡く、祖父が使っていたのであろう肘掛け回転椅子に仰け反って身を預け、抱いたアルバムと共に回る彼女のシルエットが幼きその日を巡らせる。 独りの穹(そら)による素晴らしい映像である。

$FILE1_l 列車の車窓から空を仰ぐその少女の“絵”も、透き通るような肌の白さとそれに合わせたかの淡いドレス風衣装にドキリとさせられるが、これは直前に紹介される横柄で我が儘な小生意気娘とその介護人たる善良そうな連れ合い美少年の映像が未だ消えやらぬせいでもあり、意外性のインパクトでもある。

 双子の兄妹の妖しい関係、これぞ背徳物語となれば君子危うきに近寄らずで早々と退散するのだが、一葉(かずは)や瑛(あきら)、奈緒(なお)に梢(こずえ)など、居並ぶ面子を見ればまんざらでもなく、渚家メイドの初佳(もとか)さんが主役を張るSDお笑い寸劇が毎回サービスとして食後のお茶代わりに付いているのも結構な趣で、この作品は週に一度の楽しみとなった。 心理描写がとにかくきれいで、上手い。

 田舎の風情に忠実であるのは元より、一人の美少年を取り巻く多様な少女達が魅力である。恋愛アドベンチャーというからには、この少年を操って各少女達とお近づきになり最終的にはナンダモンダに至るゲームなのだろうと想像する。ゲームは知らないのでこの際横へ置いておくとして、アニメを見る限り、少年・悠(はるか)の類い希な美貌を羨むばかり。
$FILE2_r 少女達が夢見る王子様を絵に描いたようなもので、一葉も奈緒も梢も、出会ったその瞬間から頬染めては胸ときめかせるではないか。このハル君ならば鼻に指突っ込んでボケーっと突っ立っていたところで女の子はハートマークの目をもって見るに違いない。いささか下品な例えながら、彼女と食事中にブカブカ放屁しても彼ならば許されるだろう。 まったくもって世の中は不公平である。

 第4話では一葉とナンダモンダでゴールインする。次は瑛編なのか。ゲームよろしくセーブまでのデータを立ち上げて御覧あれで、そこからの分岐物語となる運びらしい。頼むから巫女さん・瑛にだけは手を出さないでくれと願いたいが、なにせ非の打ち所無い王子様、惚れてしまえば仕方ない。行き着くところまで見せられるはめになるのだろう。

$FILE3_l 豆タンクのような瑛を好きである。顔の作りは 「八神はやて」 に似たところがあり、何かの拍子に関西弁を口走ってしまいやせぬかと案じたりする。寝起きも苦楽も共にしているのだろう、いつもアタマに乗っかる相棒のネコとは一心同体に見える。
 溌剌としており、体力は超人並みのようだ。学校へ通いながら神社を一人で切り回し、伊福部商店に寄ってはものぐさなやひろの手伝いをこなし、近所の爺さん婆さんの買い出しもする。 妾の子、腹違いな一葉の姉という負い目をおくびにも出さず、だだっ広い神社にネコと共に一人住まいである。その小さな身体で肩肘張って他人を思いやる姿がなんとも健気だ。

 瑛の実父である地元代議士は与党のドンなのかどうだか分からない。結構な力を持っているのだろう。ただ、その女房というのは出てこない。徳川秀忠の正室・お江様が夫の隠し子発覚に般若の如き形相でお怒りになったそうだが、それは無理もない話で、瑛の実父もそれを渚家に認めさせること叶わなかっただろう。第一、週刊誌にスッパ抜かれでもすれば脇腹をブスリと刺されるこんなスキャンダラスな深傷はない。政治家生命も危うくなる。表立って認知せず、秘かに金銭的援助を続けていたのは然るべき措置だったか。

 第4話の一部完結は父に対する一葉の誤解が解けて終わる。一葉の奏でるヴィオラの旋律にあの夜のベッドシーンを絡めている辺りは粋な計らいと言おうか。
 この濡れ場が視聴年齢制限なのだろう。しかしエロ作品に括り込まれるものではない。デンジャラスゾーンを描いているのでもなく、ヌメヌメ感も与えはしない。それよりもっと股ぐら描写の際どい一般向けアニメが腐るほどあるではないか。そこに “真剣味” や “現実味” があってはいかんという事なのか。青少年の性的羞恥心をいたずらに刺激し・・・・とよく言われているが、濃厚なキスシーンならよいのか、陵辱まがいの映像も魔法使いや吸血鬼の絵空話なら子供さんもどうぞ御覧下さいという訳か。 しばし疑問符と相まみえる。

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