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焼き肉

 飲み連れと二人で焼き網を挟んで座り、豚のホルモンを喰い始めると、もう精肉は注文したくなくなる。 喰うのが忙しいからだ。 面倒なので二人前のホルモンを網の上にドバーッとあけてしまう。 やい、おめぇ早ぇじゃねぇか、もちっとゆっくり喰ったらどうなんだ。 なに言ってぁがる、おめぇこそ、もっとよく焼いてから喰え。 なんてこと言い合いながら箸と口ばかりが忙しい。 気が付けば二人で15~16人前くらい喰っている。 精肉と違って腹に溜まらないせいだ。 これが1ポンドのステーキを喰えと出されたのであれば、ちょいと大変だ。

 育ちが上品でないからか、自分は今風のきれいな焼き肉屋を好きでない。 生肉で食中毒騒ぎになったああいう店は作りもお洒落なのだろうが、看板、入り口の雰囲気からして 「喰いに入ってみよう」 という気にならない。

 きれいなベベ着たお嬢様達もお子様方もどうぞご存分にお召し上がり下さいませ、という構えはファミレスの延長だろう。 焼き肉屋は七輪に炭火、その上に簡単な餅焼き網でも置いて、もうもうたる煙と脂の中で喰う店が一番旨い。 傍らに置いたジョッキのビールに脂が跳んで、泡が即座になくなるくらいの店でなければ話にならない。
 うどん屋なら素うどんを喰ってみるといいように、豚のホルモンでも喰ってみれば、その焼き肉屋が旨いのか否かが大抵判る。 人の良さそうな韓国人のおっちゃんとおばちゃんが細々やっている店がいい。 そういう店でホルモンが旨ければ、カルビだのタンだのというやつもみなイケる。

 焼き肉屋も寿司屋も、今やファミレスと変わらない。 下手すれば居酒屋までそうなっていて、子供用のスイーツまで用意してある。 てめぇ、酒喰らう場所にガキなんぞ連れてくンじゃねぇやな、なんていう暗黙のしきたりとわきまえのあった頃が懐かしい。
 亡くなった子供さんは気の毒だ。 生肉の扱いについて慎重さを欠いた食中毒。 チェーン店なれば、お得意の 「マニュアル」 とかいう奴の上にあぐらかいて居眠りしていたのか。 生肉を客に出すという行為に、プロフェッショナルとしての吟味があったのかどうか。 厚労省の指針、指導不備も含め、死亡者が出ている現状からも再発防止措置を急がねばならん。

 また、自分達夫婦が喰いたいからと子供をそこに連れて行き、何の躊躇もなく自分達と同じものを喰わせるのは考えものだ。 免疫性も抵抗力も大人とは異なるという至極単純な道理を改めて認識しておくべきだろう。 店の衛生管理責任は重大だ。 しかし、家庭の冷蔵庫内で腐らせてしまった食材を我が子に喰わせるバカもいないだろう。 よからぬものが子供の口に入る直前で止められるのはやはり親御さんしかいないのだ。 食い物に限らず、子を守れる最後の砦は他ならぬ親御さんではないか。

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