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 交渉の席に着くに当たり、あらゆる品目の関税を撤廃する表明をせよと条件付けし、その上で交渉参加を無理強いしているのを見れば、ハナから全品目関税撤廃しろという米国の身勝手な思惑が丸見えで、鎧も武器も棄てて丸裸で出てこいと言わんばかりな無条件降伏要求に等しい。 ポツダムの汁がよほど旨かったと見える。
 我が家が苦しいから隣の家の預金も稼ぎも一緒くたにしてしまえというやり方は、暴力団大国らしい手法だろう。 ンなもなぁ、てめぇでなんとかしろ、と言ってやるのが筋で、左様で御座いますか、ウチの貯蓄はこんなにありますんで役立てて下さりませでは、暴力団への利益供与そのものではないか。

 途中撤退もあり得るという前原の脳天気発言は問題外。 お前達は交渉参入に際して全ての関税撤廃を国際表明したではないかと米国はイチャモンつけ始める。 日本が参入しそうだと喜んだアジア小国の希望を踏みにじるのかと、可哀想にも小国を人質にとった妙な屁理屈までこね回すかもしれない。 アメリカとはそういう国なのだ。
 その前に、ふざけんじゃねぇぞ! とテーブルひっくり返して途中撤退してくる度量が今の永田町にも霞ヶ関にも無い。 今までの平身低頭なお粗末外交処置の数々を見るまでもなく、外交能力皆無の売国政治屋共なれば、途中撤退なんぞ誰に出来ようかという国民の冷ややかな見抜きは当然だ。

 経団連はせっついているものの、ではこの異常な円高の下、好転が見込めるとでも思っているのか。 見通しの立たぬ円高ドル安でノコノコ参じれば相手の思うツボではないのか。 後に振り返れば、関税撤廃の意味は円高に打ち消され、金融はじめ国内市場は掻き回され、食料も隅々までメジャーが完全掌握。 今後文句でも言おうものなら兵糧攻めにするぞと脅される始末。 奴隷列島と化した最悪の未来が見える。 そこに居ながらにして一億総難民である。 この胡散臭いTPP、諸手挙げての参入など売国の行為でしかない。 個別のFTAなどを模索する能も無かった責任は重い。 元を正せば、円高に何らの手立て無く、ただ他人事のように眺め続けて放置してきた歴代政府と省庁の怠慢だ。


 農産物に関して言えば、最低限自国の食い物は保護すべきだ。 上記の如く、明日喰う米も国外から操られる惨めさも厭わないのであればそれでもいい。 だが、そうもいくまい。 自国の食い物は自国で賄うのが国家として最低限の在り方ではないか。 食料防衛とはそういうことだ。 それはまたどこの国でも同様の考えで保護政策が前面に出されている。

 ただ、断固反対を叫ぶ与野党国会議員達は本当に国の将来を思っての行動なのか。 実に怪しい。 我が票田、我が身危うしの危機感に突き動かされているに過ぎないのではないのか。 JAなどは既得権保守に必死の形相だ。
 JAや農政議員達の思惑は既得権死守のための鎖国論にしか聞こえない。 農政族議員はJA中心にした組織票を絶対に必要とし、JAは百姓から農産物を安く買い上げる一方、しょうもない高額物品を売り付ける。 週刊誌で叩かれ始めてかなり減ったと思うが、たまには御機嫌取りに飴でもくれてやれと企画するのは悪名高き 「ノーキョー・ジャパン」 の買春ツアーだったりする。 まさに日本の恥を撒き散らかしてきた連中でもあるのだ。

 TPP参入への突然な動きは、確かに自民党の言う通り、普天間問題焦げ付かせに対する米国の代替え要求であるかもしれないし、解決出来る見込みのない普天間よりはTPPに組み込まれた方が幾分活路もあろうかという、追い詰められた民主党の敗残兵心理に近いものかもしれない。
 が、しかし、そんなことで罵倒する資格など自民党にあろうか。 山間僻地に至るまで殆どの農家を生かさず殺さずの票田としてきたのは誰あろうお前達ではないか。 公共工事可愛さあまり大規模農地開発だと称して造った田に手のひら返して減反政策を敷いてきたのはどこのどいつなのだ。 国の第一次産業をおのれらの都合のみによって振り回してきただけのお前達が、この期に及んで何を偉そうにほざいてやがる、というのが農家の冷めた目であるのが実際に思う。

 農家の動勢は国の示す如く大規模化に向かってはいる。 生産者価格が下がる以上、当然の傾向とも言える。 土地の広い北海道では 50ha を越す規模が増加、それ以下の広さでは減る傾向にあるらしい。 北海道以外ではさすがにそのような面積は確保出来ないが、概ね 5ha 以上の規模が増え、それ以下は減少しているようだ。 小規模農家が集合し、何らかの経営体を組織しているのも多々ある。
 自給農家はこのまま減少し、コスト削減も出来ぬ小規模な実状もあり、生産物を買った方がはるかに安く、やがては後継者不足で絶えていくしかないように思う。 元々、自給農家の方がより高齢化しているだろう。 年寄りのボケ防止だと言わぬばかりな農家もある。

 主食米などについて言えば、完全に二極化していくかもしれない。 販売農家は大規模に収まり、自給農家は小規模のまま衰退に向かう。 農業者戸別所得補償など愚の骨頂である。
 但し、いくら大規模水田の作米だとしても、大陸の桁違いな耕作地の米とは価格勝負出来ない。 値の安さでは関税抜きに絶対勝てない。 確かに日本の農家は良質な作物を産む。 だが安全性を除けば、外国産との品質差優位は価格差から来る消費動向の現実に及ぶまい。 日本の農家は100% 負けてしまうのだ。 工業製品輸出には僅かながらの恩恵もあるかもしれない。 だがその時、食料は外国産に席巻され、日本から農業という産業が消え、その他の産業もより深刻な空洞化になっているに違いない。 これはあからさまな日本占領である。

 

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