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街の声と世論調査

 まぁ、こんな大変な時ですからね、助け合うって言うんですか、私達もそりゃ少しは我慢しなくちゃいけないと思うんです・・・・。

 大手メディアの流す基本的な “街の声” というやつである。 この際だから復興のための増税は仕方ないですね、というのが世論調査結果で多数を占めているのだと、まず第一にそれを報道のアタマに持ってくる。 「増税やむなしと国民は考えているのである」 との御旗を高々と掲げる。 癒着利権構造の牙城、絶対死守に努める連中にとって思うがままに事は運ぶ。 国が沈みかけている難事に、根本的な悪しき要因に触れもせず、おめでたい話である。

 これが街頭インタビューの結果ですと流しまくるTV報道ほどいかがわしいものはない。 真っ昼間の街中で忙しくもなさそうにプラプラ歩いているオバチャンを取っ捕まえて 「御意見頂戴」 などとやったところで、国家やら外交やら国防だの利権汚職だのを日頃から考えているような人種でないのは明らかだ。 物価下げてくれりゃいい、旦那の給料上げてくれりゃいい、程度が彼女等の世界だろう。 それが大衆の声で御座いますと言わぬばかりに報じる様は、芸能人の浮気話も尖閣諸島・竹島侵略も何ら区別無い議論扱いで、間抜けな毒素を国民に撒き散らかすだけの行為だ。

 小沢一郎の弁ではないが、世論調査というのも、ある程度は誘導尋問的側面を持つだろう。 三択なり五択なりでひとつ選べという質問では、「お前、その質問の仕方はおかしいだろうが」 という声も多いと思われる。 もっとも、短時間で集計しておおまかな傾向を掴むだけの調査なれば、ややこしい斜めからの突っ込みをいちいち受け入れたのでは調査する側がたまらない。
 要はその程度の調査でしかないものの、トップニュースで報じればそこに重みが加えられる点がミソなのだ。 だが実際はその主要問題の背景なり裏側なりに言及した問い掛けは一切なされない。 何を隠そう、彼等は御用メディア故に、オカミに都合悪い質問内容の世論調査はタブーだからである。

 政府の原発事故対応は適切であったか? という投げ掛けはしても、情報の出し渋りと初動対処不手際の第一原因はどこにあったと思うか、次の中から選べ、などという調査はしない。
 責任のなすり付け合いだったのか、政財官によるズブズブダラダラな癒着利権構造を守ろうとしたのか、或いはまったくの能無しばかりだったからか。 それらが世論調査データとして表立ち、夕方のトップニュースで全国民に報じられたのでは困るからである。

 戦争へ戦争へと世論扇動に傾倒し、挙げ句は大本営の嘘八百報道機関に堕落した当時から少しは学ぶものを得ているのかと疑問を懐く。 原発事故に至る責任は一体どこにある、例によって政財官のうやむやで誤魔化しなのか。 過ぎてみればどこも責任取らず、それの追及も無いまま、今やメディアはなりふりかまわず増税へ増税へと煽るかの論調ではないか。 当該の政財官に罪はないのか。 まずお前達が身ぐるみ剥いで国の出費を極力抑えに努めるのが先ではないのか。 それとも不始末責任は国民にありとでもいうのか。
 いつの時代も国家中央からの圧力はある。 だが国民のためのメディアを自負するならば、オカミの顔色伺いな姿勢はいい加減に改めねばならない。 腰のない業界にも少しは正義というものがあるだろう。

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